ウクライナ兵がロシア人捕虜を虐殺すれば邪悪のスパイラルになる
Ukrainians Killing Russian POWs Risks Spiral of 'Depravity'—Expert
ロシア兵との捕虜交換に向かうウクライナ兵(2015年、ウクライナ東部ショロボク) Igor Tkachenko-REUTERS
<憎しみと報復感情のなかで戦闘行為と戦争犯罪の区別がつかなくなると>
ウクライナ軍の兵士が、捕虜として拘束した複数のロシア兵を射殺する場面を撮影したとみられる動画(本物と確認済み)が、ネット上に公開された。専門家は、このような行為は戦争を「言葉にできないほど邪悪な所業」の応酬に陥らせる危険があると、警告している。
問題の動画は、4月7日に公開された。本誌はこの動画について、ウクライナ外務省にコメントを求めたが、本記事の発行時点までに返答はなかった。
米防衛&国際安全保障研究所のディレクターを務めるピーター・キャディック・アダムズは、動画について「憂慮すべき」内容だと指摘。だが「何が起きているのか」を断定するのは困難であることから、これが戦争犯罪にあたるかどうかについてはコメントできないと述べた。
「肝心なのは、動画の背景にどのような事情があったかということだ。(撃たれて)横たわっている男は、動画の撮影が始まる前に手りゅう弾などを投げようとしていたのか。これは処刑なのか、それとも戦闘の一場面なのかが重要なところだ」とキャディック・アダムズは本誌に語った。
民間人虐殺への復讐感
彼はまた、ウクライナ兵が複数のロシア兵をひざまずかせて銃で撃つ様子を撮影した、別の未検証の動画についても言及した。
「動画が本物なら、断じて受け入れられない行為だ」と彼は述べ、これまでウクライナ側でこのような実例の報告が浮上してこなかったのはむしろ意外だった、とも語った。
キャディック・アダムズによれば、プロの兵士は戦闘行為と戦争犯罪の違いを理解しているはずだが、徴集兵や民兵はその区別ができない傾向にある。
「ウクライナ戦争では、古いタイプの戦争が復活しているようだ、徴集兵と徴集兵、民兵と民兵。多くの人が、現代ではもう見ることはなくなったと考えていた。とても気の滅入る光景だ」と彼は述べた。
「ボスニアをはじめとする複数の戦闘地域で従軍し、虐殺や虐待を目の当たりにした兵士たちの強い憤りを見てきた経験から言うと、冷静な統率者がきわめて重要だ。それがなければ、言葉にできないほどの邪悪の応酬に陥る可能性がある」
キャディック・アダムズはまた、ウクライナの首都キーウ(キエフ)の北西にあるブチャで、ロシア軍が民間人を虐殺したとみられることについて、ウクライナの兵士の間には復讐感情があるだろうと言う。「だからといって戦時国際法に違反する行為が正当化される訳ではない」