最新記事

ウクライナ侵攻

VISA、マスター制裁でロシアのクレジットカード決済は中国「銀聯」一色に?

Russia Turns to Chinese Banks for Help as VISA, Mastercard Leave Country

2022年3月7日(月)16時26分
ファトマ・ハレド

ロシアで中国の銀聯カードがVISA、マスターを駆逐する? Yongyuan Dai-iStock.

<VISAとマスターカードのロシア事業停止で、ロシアの銀行は中国の銀聯カードとの提携を計画している>

米クレジットカード大手VISAとマスターカードがウクライナ侵攻を理由にロシアでの事業を停止したことを受け、ロシア中央銀行は3月6日、国内の一部銀行がロシアの決済システム「ミール」と中国のカード運営システム「銀聯(ユニオンペイ)」を利用するカードの発行を計画していることを発表した。

ロイター通信によると、ロシアの銀行が発行するVISAやマスターカードの決済システムを使ったクレジットカードは3月9日以降、ロシア国外では利用できなくなる。

銀聯は、世界180カ国で利用可能な中国のシステムで、国境を越えた決済サービスを専門に提供している。VISAやマスターカードに代わるものとして銀聯を利用するためには、ロシア政府が出資する電子資金移動の決済システム「ミール」を中国のシステムと提携させる必要があり、二つのフランドを統合したカードを発行することになる。

ロシア最大手国営銀行のスベルバンクは、「2つのブランドを統合した『ミール・銀嶺』というクレジットカードを発行する可能性を検討している」と説明し、「新カードの発売日は後日発表する」とロシアのタス通信は報じた。

行動せざるをえない事態

タス通信によると、ミールのネットワークと銀聯システムを組み合わせたこのカードなら、国外での支払いや現金引き出しが可能になる。ロシアの民間銀行であるアルファ銀行も、このオプションの採用を検討している。

アルファ銀行は「銀聯カードを発行するためにすでに動いている」とし、ティンコフ銀行もこの措置を検討しているとタスおよびロイター通信は報じた。

だがロシア地域開発銀行(VBRR)、ポチタ銀行、ガスプロム銀行、ロッセルホーズ銀行、サンクトペテルブルク銀行、プロムスビヤーズ銀行など、ロシアの一部の銀行はすでに中国の決済システムを利用している。

ロシアへの侵攻を理由にロシアでの事業を停止する企業の数は増えているが、VISAとマスターカードがそこに加わったのは、3月5日のことだった。VISAのアルフレッド・ケリーCEOは声明でロシアを非難。ウクライナ侵攻は「平和と安定に対する継続的な脅威」であり、「我々の価値観に沿った対応」が求められていると語った。

「ロシアのウクライナに対するいわれのない侵攻と、目の前で繰り広げられた受け入れがたい事態を受けて、我々は行動せざるを得なくなった」と付け加えた。「大切な仲間や、ロシアでサービスを提供している顧客、パートナー、加盟店、カード会員に影響を与えることを遺憾に思っている」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スカンジナビア航空、米破産手続きから脱却

ワールド

豪7月CPIは前年比+3.5%、4カ月ぶり低い伸び

ビジネス

ユーロ圏7月銀行融資、家計向け9カ月ぶり高い伸び 

ビジネス

英当局、所得補償保険などの手数料体系調査へ 利益相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本と世界の不動産大変動
特集:日本と世界の不動産大変動
2024年9月 3日号(8/27発売)

もはや普通の所得では家が買えない──日本でも世界でも不動産が激変の時を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじい攻撃」で燃え続けるロシアの弾薬庫を捉えた映像が話題に
  • 2
    ロシア本土を直接攻撃する国産新兵器をウクライナが実戦投入
  • 3
    HSBCが熱い視線を注ぐ「準富裕層」とは
  • 4
    越境攻撃で東部ドネツクの前線に穴?ロシア軍が要衝…
  • 5
    誰も指摘できない? 兵士の訓練を視察したプーチンの…
  • 6
    プーチンに背を向けウクライナに味方したモディの計算
  • 7
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 8
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...…
  • 9
    1リットルで250万円、カブトガニの「青い血液」求め…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 1
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘密の部屋」を公開...あまりの狭さに「私には絶対無理」との声も
  • 2
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじい攻撃」で燃え続けるロシアの弾薬庫を捉えた映像が話題に
  • 3
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...クラスター弾が「補給路」を完全破壊する映像
  • 4
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 5
    ドードー絶滅から300年後、真実に迫る...誤解に終止…
  • 6
    ロシア本土を直接攻撃する国産新兵器をウクライナが…
  • 7
    「砂糖の代用品」が心臓発作と脳卒中のリスクを高め…
  • 8
    「海外でステージを見られたらうれしい」――YOSHIKIが…
  • 9
    黒澤映画の傑作『七人の侍』公開70周年の今、全米で…
  • 10
    誰も指摘できない? 兵士の訓練を視察したプーチンの…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 5
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 6
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 7
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 8
    バフェットは暴落前に大量の株を売り、市場を恐怖に…
  • 9
    古代ギリシャ神話の「半人半獣」が水道工事中に発見…
  • 10
    【画像】【動画】シドニー・スウィーニー、夏の過激…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中