最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ戦争は終わった、アメリカ抜きで

The Ukraine War Is Over But the Biden Administration Hasn't Noticed

2022年3月31日(木)19時56分
ウィリアム・アーキン(元米陸軍情報分析官)

ウォルターズは米議会での証言で、ロシア軍はウクライナ国民の「心に恐怖を植えつける」ことに失敗したと指摘した。だがDIAの高官は、ウクライナはロシアのこれ以上の侵略を阻止することはできるかもしれないが、「ドンバス地方のルガンスクとドネツクをロシア軍が掌握している現状を覆すことはできないだろう」と言う。

「もはやこの戦争で誰も勝者になり得ないなか、今週の一連の殺りくはとりわけ愚かなものに感じられた」とこの高官は語る。「一方がどこかでわずかな戦果を勝ち取れば、もう一方がまた別のところでわずかな戦果をもぎ取っている。だがどちらも、相手を完全に圧倒することができる状況にはない。この戦争にはもう何も残っておらず、ただ無実な一般市民が板挟みになっているだけだ」

ゼレンスキーはテレグラムに投稿した2つ目のメッセージの中で「もちろん、さまざまなリスクがある。当然ながら、我々に対して戦争を仕掛けてきた国の代表の言葉を、信用する理由はない」と述べた。つまり「事実を検証せずに信じることはない」ということだ。

DIAの高官は、「バイデン政権は、この戦争の終結に向けた方針を何も持ち合わせてないように見える」と言う。「戦争犯罪を追及するのもいいだろう。ロシアの撤退を求めるのもいいだろう。だがこうした幻想のような方針以外の何かがあるのだろうか。私たちは、戦争の終結を促すためだけに支援を行っているのではない。停戦協議を意義あるものにするためにできることもたくさんあるはすだ」

20250128issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル一時2週間ぶり安値、トランプ関税

ワールド

米ロス北部で新たな山火事、延焼拡大で約1.8万人が

ビジネス

トランプ氏の関税収入の減税財源構想、共和党内から反

ワールド

シリア経済、外国投資に開放へ 湾岸諸国と多分野で提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中