プーチンの盟友チュバイスが要職を捨てて出国、「戦争に抗議」は本当か
Putin Ally Anatoly Chubais Leaves Kremlin Post in Protest of Ukraine War
オリガルヒ(新興財閥)の生みの親とも言われるチュバイス Sergei Karpukhin-REUTERS
<ウクライナ侵攻に対する抗議の辞任というが、本当は身を守るためだという批判も>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友の一人であるアナトリー・チュバイスが、国際機関担当の大統領特別代表を辞任した。匿名の情報筋がブルームバーグに明かした。チュバイスは、ウクライナでの戦争への反対を公言していた。
それ情報筋によれば、辞任の理由はロシアによるウクライナ侵攻への反対だが、ロシア政府の複数の当局者は、この件について公式なコメントを拒んでいる。チュバイスは、ウクライナ侵攻をめぐって辞任したロシア当局者の中では、最も高位となる。
チュバイスは既にロシアを出国しており、戻るつもりはないということだ。前述の情報筋は彼の行き先を明らかにしていないが、ロシアのコメルサント紙は、トルコのイスタンブールでATMから現金を引き出す姿が確認されたのが最後だと報じた。
もっとも、反戦が辞任の理由だという説明を誰もが信じているわけではない。ロシアの反体制運動の指導者アレクセイ・ナワリヌイの広報担当者は、ツイッターへの投稿で、チュバイスが「ロシアを出たのは、自分の身と資産を守るためでしかない」と指摘した。
裏切り者の出国は「自浄作用」
ロシアにおけるチュバイスの評価は複雑だ。彼はロシアのエネルギー・石油産業成長の立役者の一人である一方で、ロシアの民営化政策を推し進める過程で、一握りの実業家を裕福にさせたと批判もされている。オリガルヒ(新興財閥)と呼ばれるこれらの実業家は、このところ各国による制裁の対象となり、国外脱出も相次いでいる。
ウクライナ侵攻以降、チュバイスなど数多くのオリガルヒや市民が国外に逃れていることについて、プーチンは最近の発言の中で「社会に必要な自浄作用」だと述べた。「どんな人も、特にロシアの人々は、真の愛国者と駄目な人間や裏切り者を区別することができる。そして彼らを、口の中に偶然飛び込んできた小さな虫のように、吐き出すだろう」と彼は述べ、さらにこう続けた。「この自然な、そして社会に必要な自浄作用は、私たちの国やその連帯、団結や、あらゆる困難に立ち向かう覚悟をますます強固なものにすると私は確信している」