最新記事

ウクライナ

「外国人義勇兵」がロシアの捕虜になったら...そのあまりに過酷な運命

Ukraine’s Foreign Fighters

2022年3月22日(火)17時07分
デービッド・マレット(アメリカン大学准教授)

220329P34_YHE_02.jpg

米軍のグアンタナモ収容施設に捕らわれた容疑者(2002年) REUTERS

最近の例では、01年にアフガニスタン紛争が始まると、アメリカが敵の兵士を「違法な敵戦闘員」と呼んだ。チェチェンでのロシアの対応と同じく、アメリカはアルカイダの工作員とみられる容疑者を拘束しても通常の刑事司法制度に従って訴追しなかった。さらにアメリカは、外国人兵士は国家の軍隊に属していないため正規の兵士ではなく、戦争捕虜としての権利はないと宣言した。容疑者は尋問と拷問のため、キューバにあるグアンタナモ米軍基地の収容施設に送られた。

この政策のためにアメリカは、対テロ戦争への国際的な支持を失った。イスラム過激派は、グアンタナモやイラクのアブグレイブ収容所での収容者の扱いをプロパガンダに利用。こうした扱いからイスラム教徒を救うという名目で、アフガニスタンやイラクで戦う外国人兵士を数多く集めた。

外国人兵士からあらゆる権利を奪ったせいで、アフガニスタンでのアメリカの活動は台無しになり、失敗の一因になったとも言えるだろう。

ウクライナでの動きから見て、ロシアが外国人兵士の扱いに対する世界の反発を恐れている様子はない。各国政府は自国民がウクライナへ渡ることに慎重な姿勢を取っている。アルジェリアやセネガルなどは国際法で認められていないという理由で、自国民にウクライナへの渡航を禁じた。アメリカをはじめ多くの国では、ロシアと戦う外国人義勇兵を全面的に支持するのではなく、平和的な援助活動などでウクライナを支援すべきだといった主張が聞こえる。

紛争の行方がさらに複雑になる

だがどの国の政府も、自国民が捕らえられたり処刑されそうになった場合、確実に解放させるために何をするかという点には全く触れていない。

既に現地にいるアメリカや日本、インド、イギリスなどの兵士がそのような状況に陥ったら、どうなるのか。国民の怒りに後押しされて彼らの国の政府がロシアと戦争を始めることはないだろう。だが緊張緩和を図ったり、交渉による解決を目指すことは難しくなるかもしれない。

こうしたリスクを最小限にするため、各国は外国人義勇兵についての方策を今すぐ明確にする必要がある。自国民に対する一切の責任を否定するという選択もなくはない。

だが、外国人兵士への拷問や処刑のシーンを映した動画がネットで拡散される可能性は否定できない。そうなれば、犠牲者の敵を討ち、他の義勇兵を守るための行動を起こせという声が高まるだろう。

各国は、ウクライナ軍に参加する全ての兵士に合法的な地位を認めるよう改めて訴えるべきだ。母国を飛び出してウクライナのために戦うことを選んだ自国民の権利を守る方法は、それしかないかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ・メキシコ、米の一律関税免除 移民・麻薬巡る

ビジネス

関税でインフレ長期化の恐れ、輸入品以外も=クーグラ

ワールド

イラン核開発巡る新たな合意不成立なら軍事衝突「ほぼ

ビジネス

米自動車関税、年6000億ドル相当対象 全てのコン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中