イスラエルにさえ拒否され逃げ場を失うオリガルヒ
Russian Oligarchs Are Running Out of Places to Hide Their Money
スペインで差し押さえられたロシアの軍産複合企業のCEOセルゲイ・チェメゾフのスーパーヨット(3月9日)Albert Gea-REUTERS
<プーチン政権を支えてきたロシアの実業家や富豪は、制裁を避けるため豪華ヨットやプライベート・ジェットの隠し場所探しに躍起になっているが、逃避先はほとんどなくなった>
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、プーチン政権を支えてきたロシアのオリガルヒ(新興財閥)に対して、欧米諸国は厳しい制裁を科している。資産凍結などの制裁から逃れるために、オリガルヒは他国への避難を画策しているが、これまで欧米とは同調せずに事態を静観していたイスラエルにも受け入れを断られた。
イスラエルのヤイル・ラピド外相は3月14日、スロバキアのイワン・コルコフ外相との共同会議で、イスラエルはオリガルヒの安全な逃避地にはならないと、明言した。
ラピドによると、外務省はイスラエル銀行、財務省、経済省、エネルギー省、空港当局と提携し、イスラエルが「制裁回避ルート」にならないようにするために尽力しているという。
ロシアのウクライナ侵攻を非難しながらも、これまで世界の国々と共に制裁を加えることを拒んできたイスラエルにとって、これはきわめて異例の動きだ。
イスラエルは最近、プライベートジェットやヨットによる入国を監視・制限している。欧州での資産差し押さえを逃れようとするロシアのオリガルヒがイスラエルに避難するのを防ぐためだ。
ロシアとプーチンを取り巻くオリガルヒに対する厳しい制裁が始まって以来、ロシアの大富豪が所有する豪華なスーパーヨットがヨーロッパ各地で差し押さえられている。
消えゆく安住の地
スペインのバルセロナでは、元KGB(国家保安委員会)将校でプーチンと親しく、現在は国営コングロマリットのロシアン・テクノロジーズ(ロステック)を経営するセルゲイ・チェメゾフ所有の1億4000万ドルのヨットが警察に押収された。
またイタリア政府はロシアのオリガルヒ、アンドレイ・イゴレビッチ・メルニチェンコが所有する5億8000万ドルのヨットを押収、ドイツ警察当局は大物実業家アリシェル・ウスマノフの6億ドル相当の豪華ヨットを差し押さえた。今後はドイツ北部ハンブルクの港に留め置かれることになる。
サッカーのイングランド・プレミアリーグ「チェルシー」のオーナーで億万長者のロマン・アブラモビッチも、イギリスとEUの両方から制裁を受けている。クラブの所有権を信託に渡す試みも失敗し、イギリス政府に資産を凍結された。アブラモビッチはプライベートジェットでイスラエルを経由してモスクワに戻っている。
まだ資産を差し押さえられていないオリガルヒたちは今、安住の地をめざして海を渡り、あるいは空を飛ぼうとしている。だが彼らの隠れる場所は急速に失われようとしている。