ウクライナ、趣味用ドローン数百台が偵察作戦で活躍
大量に展開できる小型ドローン
同じドローンとしては、全幅12メートルのトルコ製「バイラクタルTB2」の活躍が目覚ましい。こちらは攻撃能力を備え、1機で複数のロシア輸送車を撃破するなど、顕著な戦果を挙げている。一方で小型ドローンは、当然ながら個々の能力では軍用機に劣る。しかし、民生品ならではの数の強みが売りだ。
【参考記事】
ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
軍事ジャーナリストのデイヴィッド・ハンブリング氏は米フォーブス誌への寄稿のなかで、「大型のバイラクタル無人機をこれ以上国内に調達することは難しいかもしれないが、より小型のドローンであれば輸送はかなり容易であり、フィンランドからだけでも1度に140台が供給されている」と述べ、無数に配備できる利点を挙げている。
今後の戦局次第では、その役割はますます重大になりそうだ。ハンブリング氏は「おそらく数日のうちに、戦闘はウクライナの市街地に移るとみられる」との予測を示したうえで、その際には「小型のドローンは目となり耳となり、有能な兵士たちと並び、市街戦に必要不可欠な存在となるだろう」と語っている。
攻撃能力を備えたタイプも登場している。ニューヨーク・ポスト紙は、火炎瓶を搭載可能な小型ドローンをウクライナ防衛軍が開発したと報じている。
ウクライナ領土防衛隊が改造したドローン REUTERS/Mykola Tymchenko
戦地での操縦にはリスクも
ただし、ドローンにも一定の弱みはある。その操作半径は製品によって異なるが、100メートルから4キロメートルほどだ。ロシア軍の部隊への接近は避けられず、 操縦者は相応のリスクを負うことになる。このためボランティアたちは、安全確保の心得を互いに共有している。
物陰に隠れて操縦することはもちろんのこと、操縦者から一直線に放つのではなく複雑な飛行ルートを取ることで、操縦元の位置を特定しにくくなる。また、敵が視認しにくいよう低空を飛行すること、さらには妨害電波によって誤誘導されないようGPSのモードをオフにするなど、偵察活動特有の手法を有志たちは編み出している。
もうひとつの懸念点は、ドローン自体の安全性だ。ドローン市場は中国・深センのDJI社などが寡占しており、ウクライナでも国産と並んで中国製が広く流通している。とくに安定性や飛行距離などに優れる高性能機ではこの傾向が顕著だ。