最新記事

ドローン

ウクライナ、趣味用ドローン数百台が偵察作戦で活躍

2022年3月11日(金)18時50分
青葉やまと

大量に展開できる小型ドローン

同じドローンとしては、全幅12メートルのトルコ製「バイラクタルTB2」の活躍が目覚ましい。こちらは攻撃能力を備え、1機で複数のロシア輸送車を撃破するなど、顕著な戦果を挙げている。一方で小型ドローンは、当然ながら個々の能力では軍用機に劣る。しかし、民生品ならではの数の強みが売りだ。

【参考記事】
ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に


軍事ジャーナリストのデイヴィッド・ハンブリング氏は米フォーブス誌への寄稿のなかで、「大型のバイラクタル無人機をこれ以上国内に調達することは難しいかもしれないが、より小型のドローンであれば輸送はかなり容易であり、フィンランドからだけでも1度に140台が供給されている」と述べ、無数に配備できる利点を挙げている。

今後の戦局次第では、その役割はますます重大になりそうだ。ハンブリング氏は「おそらく数日のうちに、戦闘はウクライナの市街地に移るとみられる」との予測を示したうえで、その際には「小型のドローンは目となり耳となり、有能な兵士たちと並び、市街戦に必要不可欠な存在となるだろう」と語っている。

攻撃能力を備えたタイプも登場している。ニューヨーク・ポスト紙は、火炎瓶を搭載可能な小型ドローンをウクライナ防衛軍が開発したと報じている。

RTS66ZWI.JPGウクライナ領土防衛隊が改造したドローン REUTERS/Mykola Tymchenko


戦地での操縦にはリスクも

ただし、ドローンにも一定の弱みはある。その操作半径は製品によって異なるが、100メートルから4キロメートルほどだ。ロシア軍の部隊への接近は避けられず、 操縦者は相応のリスクを負うことになる。このためボランティアたちは、安全確保の心得を互いに共有している。

物陰に隠れて操縦することはもちろんのこと、操縦者から一直線に放つのではなく複雑な飛行ルートを取ることで、操縦元の位置を特定しにくくなる。また、敵が視認しにくいよう低空を飛行すること、さらには妨害電波によって誤誘導されないようGPSのモードをオフにするなど、偵察活動特有の手法を有志たちは編み出している。

もうひとつの懸念点は、ドローン自体の安全性だ。ドローン市場は中国・深センのDJI社などが寡占しており、ウクライナでも国産と並んで中国製が広く流通している。とくに安定性や飛行距離などに優れる高性能機ではこの傾向が顕著だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バチカンでトランプ氏と防空や制裁を協議、30日停戦

ワールド

豪総選挙は与党が勝利、反トランプ追い風 首相続投は

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中