プーチンと習近平が「国益を捨てて」暴走する原動力は、欧米への「承認欲求」
PUTIN AND XI’S IMPERIUM OF GRIEVANCE
この2人が何より欲しているのはリスペクトだ。もちろん彼らは知っている。大半の西側の指導者は自分たちを尊敬していないし、今後も尊敬しない、と。高速鉄道や現代的な都市を建設しても、オリンピックを開催しても、どんなに成功しても尊敬されない、と。この「リスペクト欠乏症候群」が恨みと怒りの強権支配を生む。
共通の怨嗟という磁力がかつてはライバル同士だった2人を結び付け、相互の信頼関係は「無限大」だとまで言わしめた。彼らは、ある国が「民主的かどうかを決める」のはその国民だと主張。中国とロシアは新しい形の民主国家だとまで言い募る。
問題はプーチンが戦争を始めた今、中ロのご都合主義の同盟がどこまで持つかだ。ロシアのウクライナ侵攻の直前、中国の王毅(ワン・イー)外相は国際会議で全ての国の「主権」と「領土の保全」は守られるべきであり、「ウクライナも例外ではない」と語っていた。
だが、中ロに共通する自由と民主主義への嫌悪は国家の主権を不可侵とする19世紀の理念に勝るだろう。被害妄想的な歴史観が生んだ怒りの暴発はあまりに強力で、国際法の規範では抑えられそうにない。
オービル・シェル
ORVILLE SCHELL
中国専門家。アジア協会米中関係センター所長。中国に関する著書が多数ある。政治学者のラリー・ダイアモンドと米フーバー研究所の『中国の影響とアメリカの国益』を編纂。