最新記事

国際情勢

プーチンと習近平が「国益を捨てて」暴走する原動力は、欧米への「承認欲求」

PUTIN AND XI’S IMPERIUM OF GRIEVANCE

2022年3月10日(木)17時24分
オービル・シェル(アジア協会米中関係センター所長)

この2人が何より欲しているのはリスペクトだ。もちろん彼らは知っている。大半の西側の指導者は自分たちを尊敬していないし、今後も尊敬しない、と。高速鉄道や現代的な都市を建設しても、オリンピックを開催しても、どんなに成功しても尊敬されない、と。この「リスペクト欠乏症候群」が恨みと怒りの強権支配を生む。

共通の怨嗟という磁力がかつてはライバル同士だった2人を結び付け、相互の信頼関係は「無限大」だとまで言わしめた。彼らは、ある国が「民主的かどうかを決める」のはその国民だと主張。中国とロシアは新しい形の民主国家だとまで言い募る。

問題はプーチンが戦争を始めた今、中ロのご都合主義の同盟がどこまで持つかだ。ロシアのウクライナ侵攻の直前、中国の王毅(ワン・イー)外相は国際会議で全ての国の「主権」と「領土の保全」は守られるべきであり、「ウクライナも例外ではない」と語っていた。

だが、中ロに共通する自由と民主主義への嫌悪は国家の主権を不可侵とする19世紀の理念に勝るだろう。被害妄想的な歴史観が生んだ怒りの暴発はあまりに強力で、国際法の規範では抑えられそうにない。

©Project Syndicate

NW_ORVILLE SCHELL120.jpgオービル・シェル
ORVILLE SCHELL
中国専門家。アジア協会米中関係センター所長。中国に関する著書が多数ある。政治学者のラリー・ダイアモンドと米フーバー研究所の『中国の影響とアメリカの国益』を編纂。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 10
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中