最新記事

ウクライナ情勢

プーチン、ゼレンスキー双方がのめる和平合意案、5つの条件

HOW TO END THE WAR

2022年3月17日(木)11時40分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
ウクライナ北西部の街ジトーミル

ウクライナ北西部の街ジトーミルで破壊された学校(3月4日) VIACHESLAV RATYNSKYI-REUTERS

<ウクライナの抗戦は見事だが、このままでは犠牲者が増えるばかり。両国が合意し、この戦争を終わらせる和解案とは何か>

ウクライナにおける戦争で、はっきりしてきたことが1つある。誰が勝とうと、あらゆる方面にとって悲惨な終わり方になることだ。

たとえロシアがウクライナの首都キエフを制圧して、ロシアの傀儡政権を誕生させても、大掛かりな反政府活動が続くだろう。それは多方面から資金を得て数年続き、さらに多くのロシア兵の命を奪う。

一方、ウクライナがこのまま抵抗を続ければ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は爆撃を強化して、さらに無数の市民が犠牲になる。

ウクライナとベラルーシの国境地帯で何度も「和平協議」が開かれてきたが、いつもロシア側が到底受け入れられない条件を突き付け、ウクライナ側がそれを拒否して終わる。

だが、いつかは消耗戦に終止符を打ち、和解に達しなければならない。

そのための合理的な条件とは何か。

カギは、この戦争を始めたプーチンに見返りを与えることなく、ロシア国内では勝利だと宣伝できるものを与えてやることだ。

だが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が降伏したように見えてはならない。正義の側に立ち、勇敢に国民を指揮したことについて見返りを与えられるべきだ。

この条件を満たす和解案を考えてみよう。

和解に向けた5つの条件

■1:ウクライナがNATO加盟を断念する

プーチンはウクライナに侵攻する理由を、ウクライナがアメリカ主導の(そして反ロシアの)軍事同盟であるNATOに加入しようとしているからだと正当化した。ということは、ウクライナがNATOに加盟しないと約束すれば、ロシアの勝利だとプーチンは喧伝できる。

一方、ゼレンスキーは最近、NATO加盟への情熱が薄れてきたと発言した。いくら申請してもNATO側が認めてくれないからだ。だから彼はこれを敗北ではなく、現実的な譲歩だと説明できる。

ただしウクライナは、NATO加盟国を含む個別の国々と安全保障上の取り決めを結び、武器を購入したり軍事的な訓練を受けたりできなければならない。

その一方で、ロシアが射程に入るミサイルや核兵器は、製造も配備もしないと約束する。ウクライナはそのどちらにも意欲を示していないから、これはゼレンスキーにとって譲歩にならない。

だがプーチンは、ウクライナはその両方をやると主張してきたから、この約束を自らの勝利と言える。

和平合意は、ウクライナのEU加盟申請には触れるべきではない。

プーチンはNATOよりむしろウクライナがEUに加盟し、旧ソ連の国でも西側民主主義の国になれるとロシアの人々に示すのを警戒しているという声もある。もしそうなら、和平合意を結んでも、その懸念は小さくならないだろうが。

【関連記事】
ウクライナ義勇兵、世界から2万人志願 カナダだけで1個大隊が現地入り

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中