「みんなトラウマになる」「この臆病者を見ろ」「どこの国境でも人種差別」...ウクライナ難民ルポ
SEEKING SANCTUARY
米プリンストン大学の人類学者ジョン・ボーンマンは、2015年にドイツへ逃れたシリア難民の新たな環境への適応を調査した経験を踏まえ、難民の危機的状況は時とともに薄らぐ可能性を示唆する。
だが彼のように楽観する人は少なく、ほとんどの人は深刻に懸念している。これだけの数の人を、果たして欧州諸国は受け入れ、住む場所と食べ物を用意し、適切な医療を施し、いずれは職を与えることができるのかと。
ランド研究所のリースらは、EUやNATO加盟諸国が取るべき次の一手は大規模自然災害に備えて用意してある対策の発動だと言う。
実際、ワシントン・ポスト紙の報道によれば、スロバキアは先に国家非常事態を宣言し、難民の受け入れに必要な施設などの整備に必要な資金をすぐ拠出できるようにしている。
国内の難民支援団体に補助金を出し、今後の人道支援に必要な膨大な資金の手当てをしておくことも大切だ。既にUNHCRは各国に、ウクライナ支援に17億ドルの拠出を要請している(うち11億ドルは国内避難民向け、残りは難民向け)。
UNHCRのグランディは言う。「今は受け入れ国の政府も自治体も、そして住民も難民に対する強い連帯を表明し、温かく迎え入れている。(だが)今後は、より一層の支援と保護が必要になるはずだ」
長い目で見れば、ウクライナから来た人たちが現地の社会に溶け込むのを支援する方策も必要だ。
一般論では、難民は祖国への帰還を望むが、現実は違う。ランド研究所の調査によれば、紛争が終わっても帰国する難民は全体の3分の1にも満たない。
そうであれば、ウクライナ難民も祖国へ帰らず、(それが彼らの望むところかどうかは別として)そのまま最初の受け入れ国に定住する可能性が高い。そうなった場合、私たちは一時的な善意や同情で「住まわせてやる」のではなく、共に暮らしていくすべを学ばねばならない。
それが難民にとっても、難民を受け入れるヨーロッパ諸国の人々にとっても、最も難しい課題となるだろう。
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