最新記事

ウクライナ

ウクライナにハッカー30万人が加勢 メッセージアプリ通じ世界が連携

2022年3月25日(金)11時50分
青葉やまと

その内容は、複数のPCからターゲットのサーバーに対して多数のアクセスを送るという、シンプルなものだ。それゆえ、ITにさほど精通していなくともハッキング攻撃に加われる利点がある。フョードロフ副首相はグループ参加を呼びかける際、「誰もに任務がある」とメッセージに綴っていたが、その触れ込みは決して誇張ではなかったことになる。


一方、ロシアへのサイバー攻撃に加わることで、参加者は居住各国の法に抵触する可能性がある。ガーディアン紙はメッセージのなかで、ボランティアでサイバー攻撃に加わることの危険性を強調している。

欧米の当局関係者は同紙を通じ、ウクライナIT軍のメッセージ・グループへの参加を「強く非推奨とする」と述べ、「いかなる形であれ、我々が犯罪を奨励することはあり得ない」と警告した。しかし、グループに集う有志の多くは、それを認識しながらもなおウクライナの力になりたいと望んでいる。

デジタル版の批判ビラも

ネット上では、同グループ以外にも独自にウクライナへの助太刀を図る人々が出てきた。ノルウェーに住む50歳のIT技術者は、ロシアの人々にメールを一斉送信するサイトを立ち上げた。国営メディア以外の報道が遮断された現地に向け、侵攻の真実をありのままに伝えるのがねらいだ。

サイトを訪れたボランティアたちは最小1名からのロシア人に向け、自分が所有する正規のメールアドレスを発信元として明記したうえで、ロシア語の定型文または独自に綴ったメッセージを送信することができる。

英BBCによると、実際にロシアの人々から返信が届くことがあるという。間違っているのはウクライナ側だという主張もあれば、ロシアでは報道が少ないので事実を教えてほしいとの返信から、ボランティアとの間で文通が始まるケースもあるようだ。

第二次大戦ではヒトラー率いるドイツの上空に、体制批判のビラをまく航空機が飛び交った。このメッセージ送信サイトの開設者は、「より現代的なやり方で人々に目を覚ましてもらうための試み」だと説明している。

サイバー攻撃からメッセージを通じた呼びかけまで、さまざまな運動がネット上で盛り上がりをみせ、ウクライナの現状を変えようと試みている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中