最新記事

ウクライナ

「これで海から進軍可能に」とロシアが豪語した軍艦、3日後に「破壊」される

Russia Bragged About Berdyansk Days Before Ukraine Claimed to Destroy Ship

2022年3月25日(金)18時51分
マシュー・インペッリ
ロシア揚陸艦オルスク

ロシア揚陸艦オルスク Yoruk Isik -REUTERS

<ウクライナが「破壊した」と発表したロシアの揚陸艦は、わずか数日前にロシア側が「港を占領した」と豪語していた際に言及された艦だった>

ウクライナ軍は3月24日、ロシア軍に制圧されている南部ベルジャンスクの港で、停泊中だったロシア軍の揚陸艦を破壊したと発表した。この揚陸艦はつい数日前、ロシアが同港に入港したことを大々的に発表していたものだった。

ウクライナ国防省は24日、ツイッターに「ロシアに占領されているベルジャンスク港で、ロシア黒海艦隊の大型揚陸艦オルスクを破壊した」と投稿した。ツイートには、炎に包まれたオルスクとみられる艦船の写真も添えられた。

このわずか数日前、ロシア軍の当局者たちは、ベルジャンスク港を占領し、オルスクを入港させたと自慢気に述べていた。

ロイター通信によれば、ロシア軍は21日に、オルスクがベルジャンスク港に入港したと発表。「同港を使えることには、これ以上ないほどの重要な意味がある」という、ロシア国防省系のテレビ局「ズベズダ」の報道を引用していた。

ロシアの国営メディアRTも、23日にツイッターに投稿した動画の中で、ロシア軍がベルジャンスク港を占領したと報じていた。

この動画の中で、RTのムラド・ガズディエフ記者は、「ロシア軍の各部隊は陸、空、そして今では海からも、ウクライナへの進軍を続けている」と述べ、さらにこう続けている。「アゾフ海とそれに面する複数の港も町も、今やロシアが掌握している。これによりロシア黒海艦隊と大型揚陸艦オルスクが、作戦を展開できるようになった」

ガズディエフはさらに、次のように述べている。「この艦船の特徴は、複数の部隊や重い装備品を輸送できることだ。戦車20台、装甲車40台に加え、大勢の兵士を運ぶことができる」

ベルジャンスク港の映像であることは確認

ウクライナ国防省がオルスクを破壊したと発表したすぐ後、ロイター通信は、攻撃の様子を捉えた映像を入手し、ベルジャンスク港で撮影されたものだと確認が取れたと報道した。だがロイターは、映像の中で攻撃を受けた艦船がオルスクだったかどうかについては、確認できなかったとしている。

ウクライナのハンナ・マリャール国防次官は24日、オンライン記者会見の中でオルスクについて質問を受け、「オルスクは確かに破壊された」と答えた。またニューヨーク・タイムズ紙が入手した声明の中で彼女は、「ウクライナ軍は、この巨大な標的を攻撃した」と述べた。

本誌はこの件について、ウクライナ国防省およびロシア外務省にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。

ウクライナでは、ロシアのウラジーミル・プーチンが「特別軍事作戦」の実施を発表して以降、数週間にわたって、ウクライナ軍とロシア軍の戦闘が続いている。アメリカをはじめとする欧米諸国は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し続けており、またロシアが化学兵器を使った攻撃を行う可能性があると警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、情報漏洩巡り安保チーム擁護 補佐官「私

ビジネス

米、輸出制限リストに中国などの80団体追加 「技術

ワールド

豪CPI、2月前年比+2.4%に鈍化 5月利下げ観

ワールド

ブラジル経済閣僚、今年後半に利下げに転換する可能性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中