最新記事

インド

女性の目から2センチの生きたハエが摘出される インド

2022年3月7日(月)12時10分
青葉やまと

女性の目から生きたハエが摘出された...... (イメージ) nakornkhai-iStock

<アマゾンで虫に刺された女性。ほどなくして、右まぶたの内側にうごめく何かに気づいた>

インド・ニューデリーの病院で、女性の目から生きたハエが摘出された。手術は麻酔なしで行われ、右まぶたの組織の内部から体長約2センチの生体が取り出された。

また、同じサイズのハエが女性の首の後ろと右上腕にも確認され、摘出は計3匹となった。手術は無事完了し、女性はすでに退院している。女性は以前アマゾンの熱帯雨林を訪れており、その際、人に寄生するハエ「ヒトヒフバエ」の卵が体内に侵入したとみられる。

女性はインドAPNニュースに対し、経緯をこう語る。「アマゾンのジャングルから戻ると、右まぶたに虫刺されができていました。徐々に大きくなり、出血もはじまりました。毒グモに噛まれたのだと思っていましたが、刺された場所の中心には小さな穴が開いていて、その穴から何かが這い出てこようとしているのが見えました。」

ヒトヒフバエはヒツジバエの一種で、幼虫がヒトに寄生する性質をもつ。通常は宿主の組織を食べながら、サナギになるまでの数ヶ月を皮膚の下で過ごす。

Article_BF6702120_Fig1_HTML.jpg

2005年の症例。右内眼角に幼虫が白い斑点として見えた (nature)


41433_2006_Article.jpg

2005年の症例。幼虫が現れた(nature)


顔全体が侵食されるおそれもあった

救急医らは女性が訴えた症状と旅行歴から、ウジの寄生によって引き起こされる感染症である「蝿蛆症(ようそしょう)」と診断し、手術に踏み切った。

対応した医師のひとりであり救急科を率いるモハマッド・ナッディーム医師は、「非常にまれな皮膚蝿蛆症の症例でした。このようなケースでは、緊急かつ詳細な診断を下す必要があります」と述べている。摘出が遅れた場合、皮下組織の破壊が進み、眼球を収めている眼窩(がんか)や鼻、ひいては顔全体など広範囲が侵食されるおそれがあったという。

現地ニュースチャンネルの『インディアTV』は、「ヒトヒフバエを除去しない場合、組織が破壊され、まれに髄膜炎あるいは死につながる可能性もある」と報じ、生命に関わる感染症を引き起こす可能性があると強調している。

インドPTI通信によると患者は32歳のアメリカ人女性で、2ヶ月前にアマゾンのジャングルを訪れていた。その後1ヶ月から1ヶ月半ほど、まぶたの内側で何かが動く様子を感じていたという。

帰国後に複数の医師の診断を受けたものの、原因の特定や異物の除去には至らなかった。アメリカでの対応が難しいと考えた女性はインドへ飛び、ニューデリーの救急病院を受診する。女性の詳細は報じられていないものの、現地報道を総合するとインド系アメリカ人であり、母国の医療を頼った可能性がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米11月ISM非製造業総合指数52.1に低下、価格

ワールド

米ユナイテッドヘルスケアのCEO、マンハッタンで銃

ビジネス

米11月ADP民間雇用、14.6万人増 予想わずか

ワールド

仏大統領、内閣不信任可決なら速やかに新首相を任命へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求可決、6時間余で事態収束へ
  • 4
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 9
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 10
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中