最新記事

WHO

WHOの日本人幹部に人種差別と不正疑惑、米英人などの部下が内部告発

U.S., U.K. Criticize WHO For Not Reporting Alleged Racism, Abuse from Top Official

2022年2月1日(火)17時36分
エリン・ブレイディ
葛西健

30人もの職員から人種差別等の内部告発を受けたWHO西太平洋事務局長の葛西 WHO

<国際機関で高い地位にある日本人が、部下たちから人種差別と不正行為で内部告発を受けた。本人は否定しているが、AP通信は証拠の音声テープを持っているという>

WHO(世界保健機関)のある日本人幹部が、人種差別と不正行為で告発された問題で、アメリカとイギリスがWHOに、さらなる説明責任を果たすよう求めている。

この問題は、WHO西太平洋地域事務局の葛西健事務局長が、同事務局で「組織的ないじめと人前でのあざけり」が横行する文化をつくり出したとして、内部告発を受けたものだ。AP通信によれば、アメリカとイギリスの2人の代表者はこの疑惑について、WHOの対応が不十分だと非難した。

アメリカの代表者は、今回の告発は「WHOの基本的価値観と、WHOと世界各地の地域事務局が行っている、人命を救うというきわめて重要な使命を損なうものだ」と批判。イギリスの代表者は、この問題の調査について「報道で知ることになったのは遺憾だ」と述べ、情報伝達がきちんと行われていなかったと述べた。

ジャパン・タイムズ紙は、葛西が行ったとされる行為はWHOで「受け入れられないもの」だという、疑惑発覚当時のサイモン・マンリー英国常駐代表の言葉を報じた。

「WHOにおいても、我々と提携関係にあるいかなる組織においても、人種差別や差別は決して受け入れられない」とマンリーは述べた。「WHOに対しては、全ての不正の疑惑について徹底的な調査を行い、被害を受けた人々に支援を提供することを期待する。これらの報告に対するWHOの対応を注意深く監視し、引き続き最も高い倫理基準を求めていくつもりだ」

AP通信は「会話の録音を入手」

WHOは、内部告発についての調査はきちんと行っていると主張している。WHOのテドロス・アダノム事務局長は最近の理事会で調査が進行中であることを認め、「我々はこれらの疑惑を深刻に受け止めており、緊急性をもって行動している」と述べた。

葛西については、WHO西太平洋地域事務局の30人を超える職員が「人種差別的で、非倫理的で、虐待的な言動がある」として内部告白を行い、AP通信にメールを送った。AP通信は、葛西が異なる国籍の職員たちについて、軽蔑するような発言を行っている会話の録音も入手している。

葛西本人は告発の内容を否定しており、ジャパン・タイムズによれば、彼はWHOの当局者に宛ててメールを送っている。

このメールの中で彼は、「WHO西太平洋地域事務所における、私の管理手法や労働文化に対して疑問が呈されたことを、とても深刻に受け止めている」と述べ、さらにこう続けている。「私は自分自身にも職員にも、多くを求めている。特に新型コロナの問題への対応については、そうしてきた。ただその結果、職員が敬意を欠く扱いを受けたと感じることがあってはならない。今回の問題については厳粛に受け止めており、今後は我々の地域で働く全てのWHO職員のために、職場環境の改善を行っていく考えだ」

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中