教員数が多いはずの日本で、教員の「知り合い」が少ない理由
日本の教員の新規採用に占める教員養成学部の卒業者の割合は上昇傾向にある DGLimages/iStock.
<日本では教員の生活世界が狭く、多忙のためプライベートの人間関係が広がりにくいのかもしれない>
ISSP(国際社会調査プログラム)は毎年、特定の主題を立てて各国の国民の意識を調べている。2017年調査の主題は「人間関係」。凝った言い回しをすると「社会関係資本」だ。人間は他者と関係を結んで生きる社会的存在であるだけに、興味深い主題と言えるだろう。
最初のQ1では、いくつかの職業を提示して「あなたが有している人間関係の中に、当該の職業の人はいるか」と問うている。選択肢は「家族・親族にいる」「親友に入る」「知人にいる」「いない」の4つだ。例えば、教員(school teacher)への親密度を国ごとに比べると面白い。
日本には約146万人の教員がおり、人口(1億2500万人)に対する比率にすると83人に1人だ。国別の数値はとれないが、人口当たりの教員数は多い部類に入るだろう。その教員は国民にとって、どれほど身近な存在であるのか。<図1>は、日本を含む主要6カ国の回答分布をグラフにしたものだ。
アメリカやフランスでは4割近くの国民が、家族ないしは親族に教員がいると答えている。家族や親族は運命的な縁だが、ここまで多いことには驚く。人口当たりの教員が多いのか、教員(school teacher)の意味するところが広いのか、可能性はいろいろ考えられる。日本はどうかというと、赤色の「いない」の割合が高い。自分が有している人間関係の中に教員はいないという人が7割近くを占め、他国と比べて際立って高い。
国民の就学率が高い日本で教員の相対数が少ないとは考えにくく、教員の生活世界が狭い、ということなのかもしれない。多忙でプライベートの人間関係が広がりにくい、教員集団の同質性(閉鎖性)が強い等、理由は色々考えられる。日本の教員は民間企業出身者比率が低く、同業婚の率も高い。新規採用者に占める教員養成学部卒業者の割合も上昇傾向で、出身畑の多様性も低下しつつある。
社会に人材を送り出す学校の教員は、社会を知っていなければならない。フランスの社会学者デュルケムは「教員は社会の代弁者である」と言っているが(『教育と社会学』)、それだけに社会との豊かな関係を取り結んでおかなければならない。教員の働き方改革が必要なゆえんは、こういう所にもある。