【キエフ、ドネツク】ウクライナ市民の本音を聞く
未来を占うことは諦めた
2月15日、ロシアはウクライナ国境地帯から一部部隊の撤収を発表した(アメリカとNATOは懐疑的だが)。
この日、軍事研究家のキリル・ミハイロフはツイッターに「『今回はプーチンが勝ったか負けたか』などという終わりの見えない独断的な議論」はやめて、「経済的・心理的なダメージをもっと重視すべき」だと投稿した。
ミハイロフは2014年、ロシア政府の国粋主義的な姿勢にうんざりしてウクライナに移住した。しかしキエフの石畳の通りの美しさを見る時も、戦争の影を払いのけることはできないと話す。
「買い物に出掛けて街並みを見るたびに、この平和で美しい光景を目にするのは最後かもしれないという思いがよぎる」
東部の都市ドネツクは、ロシアと国境を接し、ロシア系住民が多い(編集部注:2月21日、反政府勢力が支配する東部の「ドネスク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を、プーチンが独立国家と承認。ロシア軍の派遣を決定したとの報道が出ている)。
だが親ロシアであれ親ウクライナであれ、これまでの紛争で疲弊したこの街に暮らす多くの人々は、未来を占うことをとっくの昔に諦めている。平和が保たれるのかどうかに思い悩むことに疲れ、今はウクライナ全土を覆う「どうにでもなれ」という空気に身を委ねている。
「こんな状況でも平静を保つことが合理的な選択」と、40代の女性アナスタシア(仮名)は言う。
「次に何が起こるかを考えると、頭がおかしくなる。だから、あえて何もしない。私が事態に影響を及ぼすことはできないけれど、事態にどう反応するかを選ぶことはできる。それが生き延びるための助けになる」
「こんなふうに話をしていると強気に思われるかもしれないけど」と、アナスタシアは言った。
「正直言うと、今とても怖い」
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