台湾はなぜ「政治的リスク」を冒してでも、福島の食品を「解禁」したのか?
Getting Closer to Japan
福島と周辺4県産食品を使用した商品に原産地表示が義務付けられるかどうかは、まだ明らかにされていない(アメリカ産豚肉を使った商品には原産地表示義務がある)。台北市の柯文哲(コー・ウェンチョー)市長(民進党系)は、市内の一部では福島と周辺4県産食品の使用禁止を維持する可能性を示唆しており、他の都市の民進党系市長も追随する可能性がある。
蔡政権が日本の食品の輸入規制緩和案を発表すると、国民党は輸入規制を支持した2018年の住民投票の結果を無視する決定であり、台湾の民主主義を踏みにじる措置だと非難の声を上げてきた。
だが、その主張に新鮮味はない。かねてから国民党は、台湾全土に戒厳令が敷かれていた時代に、政治活動が厳しく弾圧された「白色テロ」を引き合いに出して、蔡はそれよりもひどい「緑色テロ」に手を染めていると騒いできたのだ(緑は民進党のシンボルカラーだ)。
さらに国民党は、蔡政権によるアメリカ産豚肉の輸入解禁も「独裁的だ」と非難してきたが、12月の住民投票で、かえってその措置が民意に沿っていることを証明することになった。蔡は日本の食品輸入についても、同じような展開を期待しているのかもしれない。
とはいえ、アメリカ産豚肉の輸入解禁と日本の食品輸入規制緩和、そして蔡が1月に功罪相半ばする亡き独裁者・蒋経国(チアン・チンクオ)を記念する文化施設の開館記念式典でスピーチをしたことは、民進党内部で亀裂を生む恐れがある。
もちろん今回の輸入規制緩和案は、蔡が党内をまとめ上げ、強固な地位を築いてきた証拠だ。だが、そんな蔡に対して、あまりにも保守的だという批判が党内から上がってきたとしても、そんなに不思議ではない。
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