最新記事

北京五輪

北京五輪マスコット「ビンドゥンドゥン」、数千の仕込みアカウントで人気演出か

2022年2月16日(水)12時10分
青葉やまと

「オンライン上のストーリー作り」の人材が募集されていた

こうした不自然な兆候は、一般ユーザに扮した話題づくりを行おうとする組織的なキャンペーンが行われていた可能性を示唆するものだ。これまでに公開された中国政府の文書からは、「SNSアカウントを管理し、新たなオンライン上のストーリーを作り上げる」ための人材が募集されていたことが明らかになっている。

オーストラリア戦略研究所のアルバート・チャン研究員はシドニー・モーニング・ヘラルド紙に対し、多数の偽アカウントによるツイートは「彼ら(中国)の従来のプロパガンダおよび情報操作と一致するもの」だと指摘し、今回も類似のキャンペーンでビンドゥンドゥン人気を創出したとの見方を示した。

チャン研究員は、数千のアカウントのねつ造により、「オリンピックなど中国のポジティブなイメージを広め」るねらいがあったと分析している。対外的な政策というよりは、中国国民の愛国心を高める目的があるのではないかとの見方だ。

これほどまでに受け入れられた要因としてはもちろん、マスコットのデザインそのものが優れていたという事情もあるだろう。しかし、その人気を加速させたしくみとして、このように人為的に仕組まれた影のキャンペーンが存在するようだ。

無邪気な笑みをうかべるビンドゥンドゥンは、外交ツールとしても機能しているという。米Quartz誌は、「このマスコットはいわゆる『パンダ外交』のよい例であり、パンダの印象のように中国はかわいく、愛らしく、フレンドリーであると暗に訴えるものだ」と指摘する。

歴代のオリンピック・マスコットには地味な存在に終わるものも多いなか、ビンドゥンドゥンは希代の注目を浴びている。親しみやすい中国の象徴と受け止めるか、情報操作の結果とみるかで、抱くイメージはずいぶんと変わりそうだ。

Chinese factories ramp up production of Olympic panda mascot Bing Dwen Dwen to meet surging demand

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中