五輪閉幕前に空爆、地上部隊、首都キエフへ──米政権が予測したロシアのウクライナ侵攻作戦
侵攻はいつ始まっても不思議でないと、サリバンは記者会見で明言した SHAWN THEW-EPA-BLOOMBERG/GETTY IMAGES
<米大統領補佐官が記者会見で不吉なことを述べ、警告を発した。「欧米諸国の結束は高まっている」とも言うが、メッセージはプーチンに届くか>
北京冬季五輪の閉幕を待たずに、ロシアがウクライナへの侵攻を始める可能性がある──2月11日、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)がホワイトハウスの記者会見で不吉なことを述べた。
ロシアは侵攻に必要な兵力を既に集結させていて、軍事作戦はいつ始まっても不思議でない、というのだ。
この記者会見でサリバンは、ロシアのプーチン大統領が侵攻を決めたという情報は現時点まだ入手していないとしつつも、在ウクライナ米国民への警告を発した。
「ウクライナにとどまっている米国民は全て48時間以内に国外に退避すべきである」と、サリバンは述べた。「軍事作戦が始まれば、空路、陸路、鉄道による脱出は期待できなくなる」
退避しなかった米国民を救出するために、米軍部隊が戦闘地帯に入ることはないと、サリバンはクギを刺した。
一方、バイデン大統領は有事に備えてウクライナの隣国ポーランドに3000人の米兵を追加派遣することを決定した。これにより、ポーランドに駐留する米軍部隊は9000人規模に膨らむ。
北京五輪が終わるのは2月20日。不吉なことに、ロシア政府当局者は、18日にドイツのミュンヘンで開幕するミュンヘン安全保障会議(欧州を中心に多くの国の首脳や閣僚が参加して毎年2月に開催される民間主催の国際会議)への不参加を示唆している。
これは、ロシア政府が外交ルートによる問題解決をもはや不可能と見なしていることの表れなのかもしれない。
昨年前半にロシアがウクライナとの国境近くに部隊を集結させ始めたとき、バイデン政権内では、ウクライナへの兵器供与を増やすべきかをめぐり激論が戦わされた。国務省と国防総省は兵器供与の拡大を主張したが、ホワイトハウスはロシア政府を刺激することを強く懸念していた。
しかし、11月以降、ロシアの部隊増強に拍車が掛かると、政権内の議論の風向きが変わり、米政府は追加の兵器供与に踏み切った。
この1年間でアメリカがウクライナに供与した兵器は、金額にして総額6億ドルを上回る。
それでも、ロシアがウクライナを侵攻する能力を持っていることに変わりはない。