北京冬季五輪は習近平式「強権経済」崩壊の始まり
China’s Economy Is Heading Toward Stagnation, Not Collapse
共産党の要求を満たすために、苦労して手に入れた利益を好きな時に使えない、あるいは取り上げられるなら、そもそも成功を目指す意味はあるのか。功績を認められないのに、努力して金メダルを取ろうとする人はほとんどいないのと同じだ。
中国の開発モデルが成功する上で最も重要なもう一つの要素は、鄧小平の言葉を借りれば「石を探りながら川を渡る」こと。つまり試行錯誤を繰り返しながら政策を発展させるやり方だ。中国は特定の改革の目的について幅広い合意が得られた後、「試しにやってみる」ことでイニシアチブや改革を生み出してきた。
各種政策を省レベル、さらには全国に展開する前に、地元レベルで試験運用を行い、実験を奨励し、それぞれの現場に合わせた解決策を探ることで、中国は最善の道を見出してきた。中国が今後、ますます複雑化し、不透明さを増しつつある状況の中で成功するためには、この点で妥協することは許されない。
2008には「開かれた中国が歓迎します!」だった
だが中央に権力を集中させ、国家統制を強化する習近平のやり方により、中国の開発モデルはトップダウン型に振れつつある。地方での試験運用は、ごく一部の例外を除いて検討もされない。粛清の繰り返しが政治的な疑心暗鬼を生み、地元当局者たちは既成の枠からはみ出すことを恐れている。そんなことをして政敵につけ込まれれば、キャリアが終わってしまうからだ。
そして米中の地政学的な対立はピークに達するなか、中国政府は実験的な方法を続ける時間的余裕などないと感じている。習の容赦ない腐敗取り締まりと、中国の台頭を封じ込めようとするアメリカの組み合わせが、試行錯誤の妨げになっているのだ。
2008年の北京夏季五輪に向けた初期のスローガンは「これまで以上に開かれた中国が、皆さんを歓迎します!」だった。中国がWTOに加盟した2001年、中国のある政府高官は、オリンピックは中国をより良い方向に変え、「より公正で調和のとれた社会、より民主的な社会の樹立を助け、中国が国際社会に溶け込む上での助けになる」だろうと述べていた。
中国共産党の見解では、これらの目標は全て達成されたし、今後も達成され続ける。それは彼らが、10年に及ぶ習近平の統治の下で、民主主義と人権の解釈を都合よく変更してきたからだ。
一方の欧米諸国は、中国がいずれ完全な市場経済に移行するだろうという期待から、彼らの産業と金融の市場を開放した。それによって中国経済は途方もなく大きな利益を得た。西側の多くの政治家たちは、中国が豊かになれば、いずれ民主国家になるという幻想さえ抱いていた。