緊急着陸したパキスタン航空、機長が再離陸を拒否 「シフトは終わった」
パキスタン国際航空のスポークスパーソンは、アラブ・ニュース紙に対し、「航空会社側が機長にフライトに従事するよう求め、機長がこれを拒否したかのような印象が生じていますが、これは完全に誤りです。ダマームへのダイバートによって(規定の)勤務時間を超過したことから、このパイロットは操縦に当たらなかったのです」と説明している。
相次ぐスキャンダルに不信 過去には3割が偽パイロット
今回の一件ではインディアン・エクスプレス紙に限らず、勤務姿勢を疑う報道が先行した。背景にあるのは、パキスタン航空業界に対する信頼の低下だ。
パキスタンの航空業界をめぐっては2020年、民間パイロットの3割が偽のライセンスで業務に当たっているとして問題になった。米CNNは、代理受験などで不正にライセンスを取得したパイロットが蔓延していると報じた。パキスタン国際航空のスポークスパーソンは、「偽ライセンスはパキスタン国際航空だけの問題ではなく、パキスタンの航空業界全体に広がっていると認識している」と弁明した。
また、パキスタン国際航空では事故が相次いでいる。昨年12月のフライトでは、同じ機が2度連続で出発空港にリターンするインシデントが生じた。1度目の機体の整備が完了すると、こんどは機長が行方不明になっていることが発覚。パキスタンのドーン紙は、機長が姿を消すという「興味深い事態」が生じたと報じている。さらに2度目のリターンとなったことで乗客の怒りは頂点に達した。空港に着くと乗務員にドアを開けさせ、160名のうち140名が3度目の離陸を待たずに降機している。
昨年5月には、雑談に興じていた同社便のパイロットがランディングギアを出し忘れたまま着陸を試み、2名を除く乗客乗員ほぼ全員が死亡という事故に発展している。
1月の離陸拒否の件に限って論じるならば、説明通りであれば機長の英断ともいえそうだ。だが、相次ぐスキャンダルを背景に、同国パイロットへの不信は根強いようだ。