中国の「始末屋」衛星、死んだGPS衛星を墓場軌道に引きずり込む
ドイツ国営メディア『ドイチェ・ヴェレ』によると、米宇宙軍のジェームズ・ディキンソン司令官は昨年4月、同種の衛星は「将来的にほかの衛星を掴むシステムの一部として使われる可能性がある」との懸念を表明している。
米FOXニュースは、今回のSJ-21の一件を受け、「衛星を移動させるという潜在的な能力は、他国が所有する衛星の軌道操作という観点で恐ろしい素質を意味する」と指摘する。
記事に対しある読者は、「だから我々には宇宙軍が必要なのだ」と反応した。今後大戦が勃発すると仮定するならば、両陣営は互いの人工衛星に狙いを定めるだろうとの指摘だ。別の読者は息子が米宇宙軍の大尉だとしたうえで、この読者の意見を支持した。
実証は他国でも進むが......
衛星によってデブリを除去するというアイデア自体は、SJ-21に限らず他国でも試行がはじまっている。日本のアストロスケール社は昨年3月、デブリ除去の実証衛星「ELSA-d」を打ち上げた。欧州宇宙機関もスタートアップ企業と連携し、2025年内に同種のミッション実施を目指す。
しかし、SJ-21が純粋なデブリ除去を目的としているかは不透明だ。米スミソニアン天体物理観測所のジョナサン・マクダウェル博士(天文学)はブレイキング・ディフェンス誌に対し、純粋に墓場軌道への投入だけが目的だとすれば、今回SJ-21が取った軌道は「異常だ」と指摘する。墓場軌道は静止軌道の上空300キロに位置するが、SJ-21は上空290キロから3100キロというかなり扁平した楕円軌道を描いた。
米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)で航空宇宙の安全保障プロジェクトを統括するトッド・ハリソン氏は、SJ-21が「解答よりも多くの疑問」を生じていると述べる。中国の真の意図は現段階では推測に頼るしかないと氏は指摘し、「この衛星とそれに続くほかの衛星を今後彼らがどのように使ってゆくのか、我々は経過を見守らなくてはなりません」と述べ、根気強い監視の必要性を訴えている。
Sneaky Chinese Robotic Satellite Caught Red-Handed