最新記事

中国

中国の「始末屋」衛星、死んだGPS衛星を墓場軌道に引きずり込む

2022年2月28日(月)18時00分
青葉やまと

ドイツ国営メディア『ドイチェ・ヴェレ』によると、米宇宙軍のジェームズ・ディキンソン司令官は昨年4月、同種の衛星は「将来的にほかの衛星を掴むシステムの一部として使われる可能性がある」との懸念を表明している。

米FOXニュースは、今回のSJ-21の一件を受け、「衛星を移動させるという潜在的な能力は、他国が所有する衛星の軌道操作という観点で恐ろしい素質を意味する」と指摘する。

記事に対しある読者は、「だから我々には宇宙軍が必要なのだ」と反応した。今後大戦が勃発すると仮定するならば、両陣営は互いの人工衛星に狙いを定めるだろうとの指摘だ。別の読者は息子が米宇宙軍の大尉だとしたうえで、この読者の意見を支持した。

実証は他国でも進むが......

衛星によってデブリを除去するというアイデア自体は、SJ-21に限らず他国でも試行がはじまっている。日本のアストロスケール社は昨年3月、デブリ除去の実証衛星「ELSA-d」を打ち上げた。欧州宇宙機関もスタートアップ企業と連携し、2025年内に同種のミッション実施を目指す。

しかし、SJ-21が純粋なデブリ除去を目的としているかは不透明だ。米スミソニアン天体物理観測所のジョナサン・マクダウェル博士(天文学)はブレイキング・ディフェンス誌に対し、純粋に墓場軌道への投入だけが目的だとすれば、今回SJ-21が取った軌道は「異常だ」と指摘する。墓場軌道は静止軌道の上空300キロに位置するが、SJ-21は上空290キロから3100キロというかなり扁平した楕円軌道を描いた。

米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)で航空宇宙の安全保障プロジェクトを統括するトッド・ハリソン氏は、SJ-21が「解答よりも多くの疑問」を生じていると述べる。中国の真の意図は現段階では推測に頼るしかないと氏は指摘し、「この衛星とそれに続くほかの衛星を今後彼らがどのように使ってゆくのか、我々は経過を見守らなくてはなりません」と述べ、根気強い監視の必要性を訴えている。

Sneaky Chinese Robotic Satellite Caught Red-Handed

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中