フェイスブックはヨーロッパから「撤退する」...メタはどこまで本気か?
Is Facebook Bluffing?
人気サービスを人質にする賭けの公算は(カリフォルニア州のメタ本社) CARLOS BARRIAーREUTERS
<欧米間の個人データ移転問題を理由に、メタ社はEUでのフェイスブックなどのサービスを停止するとの脅しをちらつかせ始めたが>
メタ(旧フェイスブック)がEUに脅しをかけている。
2月2日、同社は米証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書で、EUからアメリカへのデータ移管ができなければ、「フェイスブックやインスタグラムを含む最も重要な製品・サービスの多くが、欧州で提供不可能になるだろう」と述べた。
だが2月7日には、最後通牒を翻すそぶりを見せた。「欧州から撤退する意向も計画も全くない」と、メタの広報担当者は米メディアで発言。「ただ、単純な事実として、メタなど多くの企業や団体はグローバル事業を展開する上で、EU・アメリカ間のデータ転送に頼っている」
メタの不満の核にあるのは、欧米間の個人データの移管に関する新たな枠組みを設けるため、EUとアメリカが続けている交渉だ。以前の枠組み「プライバシーシールド」は、欧州司法裁判所が2020年7月に無効判断を下した。米国内で保管される個人情報について、EU市民が米政府の監視から保護されていないとされることが理由だ。
同裁判所がとりわけ問題視したのが、米企業が収集した個人情報を広範囲にわたって米当局が取得できること、およびEU市民の個人情報が不適切なアクセスを受けた場合、是正を求める効果的手段が存在しないことだ。
欧州でははったり扱い
興味深いことに、メタが撤退をちらつかせるサービスの中に、傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ」は含まれていない。欧州では、同アプリの人気が極めて高い。
米シンクタンク、プライバシーの未来フォーラムのガブリエラ・サンフィルフォルトゥナ副会長(グローバルプライバシー担当)によれば、新たな枠組みが不在のため、多数の企業が法的に曖昧な状態に置かれている。
「この状況では、企業は数多くの法的不確実性や規制上のリスクに直面する。欧州のデータ保護当局は、個々の事例ごとに判断できるからだ。だがアメリカには法律を制定する気がないように見える」
それでも、撤退論は誇張にすぎないだろう。実際、欧州では、メタの脅しははったり扱いされている。