最新記事

スポーツ

2月北京五輪、11月カタールW杯は? ジョコビッチ・ワクチン騒動の影響続く

2022年1月24日(月)12時15分
ハレダ・ラーマン
ノバク・ジョコビッチ

全豪オープンの会場には前回王者ジョコビッチの大きな写真が…… LOREN ELLIOTTーREUTERS

<結局、未接種だったジョコビッチは全豪オープンに出場できず、世界中の話題をさらったビザ問題は終結したが、今後のスポーツ大会に影響を与えると専門家は警告>

ノバク・ジョコビッチは、新型コロナワクチンの未接種を理由にオーストラリアから強制送還され、全豪オープンでグランドスラム(4大大会)通算21度目の優勝を果たすという夢を断たれた。

これで世界中の話題をさらった査証(ビザ)問題に終止符が打たれたが、この一件は今後のスポーツ大会に影響を与える可能性があると、専門家は本誌に語る。

全豪オープンが1月17日にメルボルンで開幕する直前、男子テニス世界ランク1位のジョコビッチはオーストラリアを後にした。

12月のコロナ感染がワクチン接種免除の根拠になるとして、ジョコビッチは大会出場と滞在許可を求めてオーストラリアの裁判所に訴えていた。

だが、裁判所はホーク移民相のビザ取り消し決定を支持した。

同相はオミクロン株によるコロナウイルス感染が急増している今、ジョコビッチの大会参加は公共の秩序を脅かし、反ワクチン感情を助長しかねないと主張していた。

ワクチン接種がスポーツ大会の参加条件としてもっと一般的になれば、今後も同様の争いが起こる可能性が高いと、オレゴン大学のジョシュア・ゴードン上級講師(スポーツビジネス)は言う。

「接種義務に従うか否か、その判断が有名選手の大会参加に影響を与えるかもしれない」

ジョコビッチが5月の全仏オープンに出場できるかどうかも、疑問視する声が出ている。

フランスのスポーツ相は1月初め、大会は選手や関係者を隔離する「バブル方式」で開かれるので、出場は許可されるだろうと述べた。

だが元内相のクリストフ・カスタネール議員は、スポーツ会場やレストランなど公共の場へのワクチン未接種者の立ち入りを禁止する新しい法律は、全仏オープンの出場希望選手にも適用されると発言。スター選手への「優遇措置」はないと、ジョコビッチを名指ししたツイートで述べた。

スポーツ大会の主催者はワクチン接種義務化について、感染拡大による試合の中止または延期がもたらす経済的影響を気にしていると、ラフバラ大学ロンドン・スポーツビジネス研究所のジェームズ・スキナー所長は語る。

「多くのスポーツ団体は商業的見地から、このアプローチを考えていると思う」

ただし、注目選手の不在も大会の収益に影響を与える可能性がある。「もしビッグネームが欠場すれば、入場料収入、放映権、スポンサー契約など収益がらみの問題が発生する」と、スキナーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに最大5.98兆円を追

ビジネス

2月完全失業率は2.4%に改善、有効求人倍率1.2

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中