中国が崩壊するとすれば「戦争」、だから台湾武力攻撃はしない
習近平中共中央総書記 Tingshu Wang-REUTERS
中国共産党政権が崩壊するとすれば、その最大のきっかけは「戦争」だ。だから台湾政府が独立を宣言しない限り、習近平は絶対に台湾を武力攻撃はしない。軍事演習は独立派への威嚇と国内ナショナリストへのガス抜きだ。
戦争を避けるために台湾経済界を取り込む
昨年12月3日のコラム<習近平、「台湾統一」は2035年まで待つ>に書いたように、習近平は台湾の「武力統一」はしないつもりで、2035年まで待って台湾経済界を絡め取って「平和統一」に持って行くつもりだ。
2030年頃には、中国のGDPがアメリカを凌駕していて、2035年頃には少なくとも東アジア地域における米軍の軍事力は中国に勝てなくなっているだろう。だから2035年まで待つ。これが習近平の長期戦略だ。
それまでに台湾経済を絡め取っていく戦略は、独立傾向が強い民進党の蔡英文政権が誕生してから積極的に動くようになった。
以下に示すのは、中国中央行政省庁の一つである商務部が出している『中国外資統計公報 2021』から引用した「台湾の対中投資推移(1990-2020)」だ。中国語を日本語に翻訳し、かつ本稿のために説明しやすいよう矢印や政権の文字などを書き入れた。
中国庶務部の『中国外資統計公報 2021』を基に筆者が作成
赤い矢印で示したのは、(「一つの中国」を受け入れる)親中的な国民党の馬英九政権が誕生した年と、(独立傾向の強い)反中的な民進党の蔡英文政権が誕生した年だ。
蔡英文政権が誕生した2016年5月以降、青色で示した「対中投資をしている台湾の新規企業数」が急増していることに注目していただきたい。
日本と同様に台湾でも「政冷経熱」が加速し、少なからぬ経済界は中国大陸、北京政府の方に近づいているのである。
馬英九政権の時は、馬英九(総統)が親中的だったため、中国は必死になって経済界を大陸の方に呼び込まなくても大丈夫だったが、民進党に入ってからは、むしろ必死になって台湾経済界を呼び込まないとまずいので、その結果がデータに表れている。
もし中国軍が米軍に勝てない状況が続いた場合
万一にも何かのアクシデントで大陸の軍隊(人民解放軍)と米軍が衝突した場合、もし近い時期であるなら、まず中国軍が負けて中国共産党による一党支配体制は崩壊する。だから台湾政府が独立宣言をしない限り、近い内に中国の方から戦争を仕掛けることは絶対にしない。