中国、また新たな国境問題 ブータンとの係争地域に入植地建設
中国が、領有権をめぐる係争が生じているブータンとの国境地域での入植地建設を加速させている。写真は中国旗と監視カメラ。北京で2021年11月撮影(2022年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)
中国が、領有権をめぐる係争が生じているブータンとの国境地域での入植地建設を加速させている。ロイターが行った人工衛星画像の分析で、2階建ての建物を含む200以上の構造物の建設が6カ所で進められていることが分かった。
ロイターでは、衛星を用いて地上での活動の情報収集を行っている米国のデータ分析会社ホークアイ360から衛星画像とその分析結果の提供を受け、さらに別の専門家2人に検証を依頼した。その結果、中国が最近ブータン国境沿いで進めている建設活動の詳細が得られた。
ブータン西部に接する国境沿いの数カ所での建設関連活動は、2020年初頭から進められている。ホークアイ360で担当ディレクターを務めるクリス・ビガーズ氏によれば、衛星画像を専門とするカペラスペースとプラネットラブス両社が提供する資料を元に判断すれば、中国は当初、道路を建設し、造成作業を進めていたという。
衛星画像からは、2021年に作業が加速したことが分かる。ビガーズ氏は、恐らく住宅用の設備や資材と思われる小規模な構造物が設置されたのに続き、建物の基礎が作られ、建物本体の建設が始まったと話す。
ビガーズ氏は、「私が見たところでは、2021年は建設加速の時期だった」と言う。
別の専門家2人は、新たな建設現場の位置やカペラスペースの撮影した最近の衛星画像を検証し、6カ所の入植地は、領有権が争われている地域約110平方キロを含め、すべて中国・ブータン間の国境係争地域に建設されているとみられると指摘する。資源は乏しく、元から暮らしている住民もほとんどいない。
ブータン外務省はロイターからの問い合わせに対して、「国境問題については公に語らないのがブータンの方針である」と回答した。同国外務省はこれ以上のコメントは控えるとしている。
2人の専門家とインド国防関係者1人は、こうした建設事業は、中国が自国の主張に具体的な形を持たせることで国境問題を解決しようと決意していることを示唆している、と話す。