ピークを過ぎた中国は世界の脅威、習近平がまず噛みつく相手は?
習近平はナショナリズムをあおり、国民の支持を得ようとする可能性が高い Andrew Galbraith-REUTERS
<習が「国力のピーク期」を浪費した、との見方がある。過剰債務、人口動態、経済格差という深刻な構造問題を抱えた共産中国が、2022年、さらに攻撃的になる可能性がある>
独裁者は業績を他人に評価されることを嫌う。たとえ親しい同僚や側近であっても、誰かに成功や失敗を評価されることは、そのリーダーの弱体化につながる大きな一歩だ。
それゆえ彼らにとっては、批判を奨励することはもちろん、許すことも問題外なのだ。
毛沢東以来、中国共産党で最も強力な「ボス」となった習近平(シー・チンピン)国家主席は、このことを特に強く感じているに違いない。
習は2022年の第20回中国共産党大会で、鄧小平が党の最高指導者に課した2期の任期制限を撤廃し、3期目の政権継続を承認される見込みだ。
鄧の任期制限には毛時代のような独裁に戻ることを防ぐ措置という側面があり、実際に党指導部の集団指導体制を実現した。
しかし、習が構築した個人崇拝と党規約に盛り込まれた「習近平思想」の内容を見れば、現国家主席の意図は容易に理解できる。
習思想の第1の特徴は、中国共産党は中国の歴史・文化の最良の部分を全て受け継ぐ者であると断言していることだ。第2に、憤怒の念に駆られたナショナリズムの色彩が強い。
第3の、そしておそらく最も重要な特徴は、国民が朝起きてから夜寝るまでの全てを習が管理していることを決して忘れるな、という党と国への指示だ。
しかし側近たちは、中国が経済力と2008年の金融危機後に欧米が直面した問題のおかげで手に入れた「国力のピーク期」を習が浪費したのではないかとみているに違いない。
「ポスト・ピーク期」の中国が抱える構造問題は、今後ますます明白になるだろう。中国はこれまでのような、厄介なほどの成功を収めた新興大国ではなくなったようだ。
中国以外の世界にとっては、それによってさらに厄介な脅威となる可能性を秘めている。
体制を脅かす3大危機
中国がピークを過ぎたことを最も劇的な形で示した事例が、不動産大手・中国恒大集団の経営危機だ。
これを2008年のリーマン・ショックと比較するのは適切ではないだろう。この問題は単なる市場の大失敗ではなく、中国政府が直面する3つの重大危機のうちの2つが結び付いたものだ。
1つ目の危機は、特に不動産部門で深刻な過剰債務だ。今の中国は、10年前と同等の成長を達成するために2倍の借り入れを必要としている。
ハーバード大学のケネス・ロゴフと清華大学の楊元辰(ヤン・ユアンチェン)の試算によると、不動産・建設部門は中国のGDPの29%を占める。土地の使用権売却は極めて重要な地方政府の収入源であり、中国の個人資産の約78%が住宅関連だ。
しかし、民間部門の債務総額は2008年~2019年の間に8倍に膨れ上がり、現在ではGDPの約3倍の規模になっている。