ピークを過ぎた中国は世界の脅威、習近平がまず噛みつく相手は?
第2の大きな問題は、人口動態だ。債務の急増と生産性の低下は、生産年齢人口の劇的な減少に伴って起きている。予測によれば、中国の労働人口は2050年までに1億9400万人減少する見込みだ。
さらに中国では男女比率の不均衡が大きく、世帯数と出生率の両方が減少している。この傾向は最も若い年齢層で顕著であり、10~14歳の男女比は1.2対1だ。世帯数の減少を考えれば、住宅建設ブームが多くの無人アパートと少なくとも50の鬼城(ゴーストタウン)を生み出したことも不思議ではない。
こうした問題に対処するため、習は生産性の高い民間企業への統制を強め、国有企業を優遇する方向に大きく舵を切った。
この政策の背後にあるのは、成功した大手IT企業に主導権を奪われ、民間部門の経済的成果が格差を悪化させることへの恐れだ。中国共産党にとって、経済的格差は第3のアキレス腱である。
しかし、富と所得の不平等さを測るジニ係数を見ると、現在の中国は多くの欧米先進国よりも格差が大きく、アメリカのレベルに近づいている。少数の億万長者に財産の一部を差し出させたとしても、これでは焼け石に水だろう。
格差を是正するためには、党上層部のために多額の富をかき集める共産党の権力構造の解体が必要になる。
習近平の中国は、深刻な資源と環境の問題も抱えている。原油の輸入量は世界最大。食糧安全保障の問題にも直面している。気候変動の影響も甚大だ。
特に中国北部は水不足に陥っている。中国の水資源は世界の7%にすぎないが、人口は18%を占め、人が住む場所と水がある場所の間に完全なミスマッチが生じている。
中国が二酸化炭素の排出量を削減すれば、さらなる経済成長の足かせとなる可能性が高い。いずれにせよ債務問題と人口問題の結果、経済成長は横ばいになるだろう。国民が経済危機を実感すれば、習はさらなる監視と脅迫によって権力を維持しようとする可能性がある。
習近平政権は地政学的に明らかに過剰な動きを見せてもいる。アメリカと自由民主主義陣営の衰退は不可避だという見方に固執する習は、「わが国が主導権を握り、優位に立つ未来」を目指すと豪語した。いわゆる「戦狼外交」を通じ、中国はインド太平洋地域の盟主となり、専制主義の成功モデルを世界に示すというわけだ。
しかし、インド、日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、ベトナムなどの近隣諸国は、習の強権外交に抵抗する姿勢を強めている。さらに、アメリカは他国との協力体制構築に成功し始めている。