最新記事

中国市場

テスラEV「新疆ウイグル自治区ショールーム新設」と習近平の狙い

2022年1月5日(水)18時07分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
イーロン・マスク

習近平と組むテスラのイーロン・マスクCEO   Patrick Pleul/Reuters

テスラが昨年末、新疆ウイグル自治区にEVのショールームを開設し、ウェイボーで「2022年、新疆EVの旅に出よう」と書いたことが話題になっている。背景には習近平の新疆スマートシティ構想という戦略がある。

テスラが「2022年、新疆EVの旅に出よう!」

2021年12月31日、テスラの公式アカウントが中国のウェイボーで以下のような文章を発信した。

  ウルムチのテスラ・センターが正式にオープンしたよ。

  2021年の最後の一日に私たちは新疆で会いましょう。

  2022年、私たちと共に新疆EVの旅に出よう!

  より美しい出会いを!

これを受けて中国の少なからぬウェブサイトが「テスラが新疆で初のテスラ・センターをオープン」といった見出しで報道した。

それらによれば、現在、全新疆ウイグル自治区内には5万台近い新エネルギー車(電気自動車=EV)があり、ウルムチでも2021年の最初の7カ月間でEVの販売台数が前年比298.29%増という大幅な伸びを達成したとのこと。

またテスラのショールームは新疆ウイグル自治区の区都であるウルムチに開設されたが、中国西北部では11番目に開設されたショールームで、中国全土では211番目になるという。これらのショールームなどは中国本土の60都市をカバーしている。

テスラのウェイボーを見て報道したのは中国大陸のウェブサイトだけではない。

アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルも1月4日、<Tesla Opens Showroom in China's Xinjiang, Region at Center of U.S. Genocide Allegations (テスラが中国新疆ウイグル自治区にショールームを開設、アメリカがジェノサイドを主張している中心地へ)>という見出しで報道し、「電気自動車メーカー、欧米企業を巻き込んだ人権問題に踏み込む危険性」と書いている。

アメリカ議会では、昨年12月23日に、バイデン大統領の署名を受けて、「ウイグル強制労働防止法」が成立したばかりだ。強制労働で生産されたものではないと企業が証明できる場合を除き、新疆ウイグル自治区からの製品の輸入が禁止されることになった。したがってテスラ産のEVも当該防止法を守らなければならない。つまり中国で製造したEVをアメリカに輸出する場合は強制労働により生産されたものではないことを証明しなければならないのだ。

テスラはアメリカ議会の議員や関連団体から激しい批難を受けているが、今のところコメントしていない。その背景には習近平と連携しながら進めている遠景があるからだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中