テスラEV「新疆ウイグル自治区ショールーム新設」と習近平の狙い
習近平と組むテスラのイーロン・マスクCEO Patrick Pleul/Reuters
テスラが昨年末、新疆ウイグル自治区にEVのショールームを開設し、ウェイボーで「2022年、新疆EVの旅に出よう」と書いたことが話題になっている。背景には習近平の新疆スマートシティ構想という戦略がある。
テスラが「2022年、新疆EVの旅に出よう!」
2021年12月31日、テスラの公式アカウントが中国のウェイボーで以下のような文章を発信した。
ウルムチのテスラ・センターが正式にオープンしたよ。
2021年の最後の一日に私たちは新疆で会いましょう。
2022年、私たちと共に新疆EVの旅に出よう!
より美しい出会いを!
これを受けて中国の少なからぬウェブサイトが「テスラが新疆で初のテスラ・センターをオープン」といった見出しで報道した。
それらによれば、現在、全新疆ウイグル自治区内には5万台近い新エネルギー車(電気自動車=EV)があり、ウルムチでも2021年の最初の7カ月間でEVの販売台数が前年比298.29%増という大幅な伸びを達成したとのこと。
またテスラのショールームは新疆ウイグル自治区の区都であるウルムチに開設されたが、中国西北部では11番目に開設されたショールームで、中国全土では211番目になるという。これらのショールームなどは中国本土の60都市をカバーしている。
テスラのウェイボーを見て報道したのは中国大陸のウェブサイトだけではない。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルも1月4日、<Tesla Opens Showroom in China's Xinjiang, Region at Center of U.S. Genocide Allegations (テスラが中国新疆ウイグル自治区にショールームを開設、アメリカがジェノサイドを主張している中心地へ)>という見出しで報道し、「電気自動車メーカー、欧米企業を巻き込んだ人権問題に踏み込む危険性」と書いている。
アメリカ議会では、昨年12月23日に、バイデン大統領の署名を受けて、「ウイグル強制労働防止法」が成立したばかりだ。強制労働で生産されたものではないと企業が証明できる場合を除き、新疆ウイグル自治区からの製品の輸入が禁止されることになった。したがってテスラ産のEVも当該防止法を守らなければならない。つまり中国で製造したEVをアメリカに輸出する場合は強制労働により生産されたものではないことを証明しなければならないのだ。
テスラはアメリカ議会の議員や関連団体から激しい批難を受けているが、今のところコメントしていない。その背景には習近平と連携しながら進めている遠景があるからだろう。