混乱のカザフスタン、当局によるネット遮断で数百万人がニュースもATMも使えず
アイシャさんの話では、カード端末やATMも稼働しなくなり、手許に現金がなかった人は食品の購入にも困るなど不便を強いられたという。
さらに、携帯電話の利用枠チャージができず、電波も途切れがちになったため、親族や友人への連絡も難しくなったとアイシャさんは言う。
チェコの首都プラハ在住のボゲさんの場合、カザフスタン出身のパートナーはこの3日間、母国内の家族に連絡が取れず、安否を確認できなかったという。
国内各地の都市では、治安部隊とデモ隊との衝突で数十人の死亡者が出たとみられている。
国内外の企業も困惑
インターネットの全面遮断は、いくつか想定外の影響を生んでいる。
先週、ビットコインを支えるグローバルなネットワークの計算能力は急激に低下した。カザフスタンはビットコインのマイニング(採掘)で世界第2位の規模を誇る中心地であり、恐らく同国にあるサーバーがダウンしたと考えられる。
だが前出のボゲさんは、証券取引所の取引からフードデリバリーの注文に至るまで、他にも多くのビジネス活動がネット接続の喪失により機能停止に陥ったと語る。
「遮断はネットワークへの信頼を低下させてしまう」とボゲさんは言う。
「つまり、カザフスタン企業の場合、将来的にビジネスにネットを利用することを躊躇(ちゅうちょ)してしまう可能性がある。また他国のビジネスパートナーにとっても同様であり、カザフスタンへの投資意欲が削がれかねない」
10日、世界各国のデジタル人権擁護団体は連名で、カザフスタン全域で「例外なく」ネット接続を完全に復旧するよう要請した。
この共同要請に参加したアクセス・ナウは声明の中で「ネットの遮断で、より安全な環境が生まれることはない」と述べた。
「(接続遮断は)国家やそれ以外の主体が、人々に対する残忍な仕打ちの責任を免れるための隠蔽(いんぺい)を行う一方で、ジャーナリストや人権擁護活動家が、危機の中で生じている事態を厳しく監視することを極めて困難にしている」
カザフスタン大統領府にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。
トカエフ大統領は7日に行った演説で、ネット接続が部分的に回復する旨を告知するとともに、ネット遮断は「好きなところに集まり、好きなことを言える権利」があると考える「自称アクティビスト」への対応だと語った。
大統領府のウェブサイトで公開された声明によれば、トカエフ大統領は「ネットへの自由なアクセスは、捏造や誹謗中傷、侮辱的言動、扇動的なアピールを自由に公表できるという意味ではない」と述べた。
10日には、アルマトイで数日ぶりにネット接続が数時間にわたり可能になったことを含め、生活が正常に戻る兆候が見られた。
「アイシャ」さんの話では、ヌルスルタンでは10日、日中はずっと問題なくネット接続が可能だったという。数日間はごくわずかな時間しか接続できず、多くのことを処理しようとしても困難だったことを思えば、歓迎すべき進展である。
「私の時間を管理するのは他の誰かではなく私自身だという、確かな自信が持てそうだ」と彼女は語った。
だが数時間後、彼女の携帯電話は再びつながらなくなった。ネットブロックスは、カザフスタンが再び「ほぼ全面的なネット遮断状態に突入した」と報じた。
Umberto Bacchi(翻訳:エァクレーレン)
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