ミャンマー検察、新たに5件の容疑でスー・チー訴追 追及の手緩めぬ軍政
昨年5月の公判で姿を見せたスー・チー。MRTV/REUTERS TV/via REUTERS
<国際社会の批判をよそに、かつての民主化の女王は闇に葬られるのか──>
軍政支配下にあるミャンマーの裁判所は1月14日、民主政府指導者で2021年2月1日のクーデター以後身柄を拘束され、複数の容疑で公判中のアウン・サン・スー・チー氏(76)に対して、新たに5つの容疑で検察側が訴追したことを明らかにした。
16日にAFPや軍政に反対する独立系メディアが伝えたもので、これまで彼女が問われていた約11の容疑のうち、昨年12月と今年1月に計4件の容疑で合計禁固6年の実刑判決が言い渡されている。今回新たに5件の容疑による訴追が加わり、スー・チー氏は依然として10件以上の容疑がかけられていることになった。
こうした動きの背景には軍政がスー・チー氏の政治生命の遮断を確実にして、軍政が公言している23年中の「民主的総選挙実施」にスー・チー氏個人、また彼女が率いていた政党「国民民主連盟(NLD)」関係者も関与させない、という強い意志が働いているとみられている。
ヘリコプター購入などの容疑
新たに追加された容疑はスー・チー氏が最高顧問兼外相に在任中のヘリコプターの購入、メンテナンス、利用に関するものとされ、クーデター直後に彼女と同じように身柄を拘束され、公判の被告の身であるウィン・ミン大統領もスー・チー氏同様の5つの容疑で新たに訴追されたという。
2021年12月に軍政寄りの国営英字紙「ミャンマーの新しい灯」が伝えたところによると、スー・チー氏とウィン・ミン大統領は共に政府がヘリコプターを購入した際、政府予算の適切な適用を怠ったうえに、その使用に際して国家財政に損失を与えた疑いがあり、腐敗防止法違反に問われ、訴追される可能性を指摘していた。
この問題となったヘリコプター購入には民主政権のウィン・ミヤット・アイ社会福祉・救済・再定住担当相が主に関わっているが、政権幹部としてスー・チー氏とウィン・ミン大統領もその購入に許可を与えたことで国家に損失を与えた責任を逃れることはできないとして訴追されるとの見通しを示していた。
ウィン・ミヤット・アイ社会福祉相はクーデター発生後に軍政の拘束を逃れて逃走、潜伏を続けており軍政がその行方を追っている。