最新記事

研究

これから出現する変異株にも効果が...「大麻」由来の「予防薬」の研究進む

A New COVID Weapon?

2022年1月26日(水)17時43分
ジャスティン・クラワンズ
大麻草

大麻草はワクチンとの併用で変異株に対しても効果が期待できるという KANJANA JORRUANG/ISTOCK

<大麻草の成分が新型コロナウイルスの感染防止に効果ありとの研究結果を、米オレゴン州立大などのチームが発表>

大麻が新型コロナウイルスへの感染を防いでくれるかもしれない。学術誌ジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクツに先頃発表された論文によれば、大麻から感染の「予防薬」を作れる可能性があるという。

オレゴン州立大学とオレゴン健康科学大学の研究者から成る研究チームはこの論文で「カンナビゲロール酸(CBGA)とカンナビジオール酸(CBDA)が上皮細胞の感染を防ぎ......生きた新型コロナウイルスが細胞に侵入するのを阻止した」と報告した。

CBGAとCBDAはウイルスのスパイクタンパク質と結合することで、その侵入を阻んだという。どちらも大麻草に含まれる一般的な化合物で、大麻製品に使用される。

「同じ大麻の成分でも、CBGAとCBDAは向精神薬テトラヒドロカンナビノールのような規制薬物ではない」と、研究を統括したオレゴン州立大学のリチャード・バンブリーメン教授は説明する。「飲み薬として使用でき、安全性も全く問題ない」

実験はアルファ株とベータ株を用いて行われ、2つの化合物はどちらにも同等の感染防止効果を上げた。「ウイルスの変異がCBDAとCBGAの有効性に及ぼす影響は極めて少ないことをデータは示しており、この傾向が既存の、そして今後出現する変異株に対しても続くことが期待される」と、論文にはある。

ただし大麻のみでは効果がなく、適切なワクチン接種との併用が必須。また現時点で有効と考えられる対象は実験で用いた高濃度のウイルス芽胞であり、少量のウイルスへの効果は未知数だ。

オンラインカルチャー誌バイスに掲載された追加情報によると、大麻たばこを吸ったり大麻キャンディーを食べても予防効果はない。CBDAとCBGAは大麻草の成長過程でのみ見られる成分で、葉から抽出する必要がある。

とはいえ安全に口から服用できることを考えれば、大麻由来の薬が登場する日はそう遠くないかもしれない。

20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

訂正(17日配信記事)-日本株、なお魅力的な投資対

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中