台湾危機の「T-DAY」は間近い? 6つの有事シナリオ
シナリオ2:金門島の侵攻
【状況】
中国は「グレーゾーン」戦略と馬祖封鎖を徹底して続けたが、台湾政府は統一交渉を一貫して拒否。中国政府の攻撃的な姿勢に世界で批判が広がる中、台湾では統一反対の世論が急速に高まった。
台湾は国防費を積み増し、兵役期間を延ばすとともに、武器や装備品の援助を一気に増やすよう米国に要請した。米国は台湾支援を主導し、より隠密性が高い潜水艦の新造計画などへのサポートを加速した。
中国軍はその間、福建省沿岸の港湾に水陸両用作戦の部隊を目立たぬよう慎重に集結させた。さらに内陸の複数の基地で空挺部隊を編成した。
【展開】
習国家主席と軍首脳らは、台湾が実効支配する金門島を占領することを決定した。この島は中国福建省の港湾都市、廈門市の沖合6キロに位置し、14万人が暮らす。
中国軍は警告なしに金門島の台湾軍司令部、兵舎、防衛拠点、主要インフラを砲撃、ミサイルを発射した。中国軍の戦闘機と爆撃が台湾側の防衛拠点を攻撃した。
空爆や砲撃が続く中、中国軍は上陸部隊を満載した揚陸艇を島の海岸線に集結させた。主要地点を奪取するため数百機のヘリコプターで空挺部隊を送り込むとともに、制圧した空港に輸送機で部隊と装備品を次々と運んだ。中国沿岸の海軍基地からは重装備の艦艇と潜水艦が発進、包囲した金門島に台湾からの支援が届かないようにした。
上空では、中国軍の戦闘機が台湾空軍機による攻撃を警戒し続けた。海からの上陸部隊は、内陸に降りた空挺部隊と連携するため島の海岸を強襲した。
【反応】
台湾側は、大陸沿岸の港湾や金門島沖合の中国軍艦艇に向けてミサイルを次々と発射した。防空システムは台湾海峡上空を飛ぶ中国軍機を地対空ミサイルで攻撃、飛来する中国軍の戦闘機と爆撃機には島に配備していた台湾軍機が緊急発進した。
【結果】
台湾の必死の要請を受けた米国とその同盟国の支援は間に合わず、中国軍の地上部隊は金門島の守備隊を圧倒した。米海軍と日本の海上自衛隊は台湾海峡へ急行したが、中国政府は介入しないよう警告した。また、負傷した兵士や民間人を本土の病院へ搬送し、島の重要インフラを復旧させるため、速やかな停戦を呼びかけた。さらに「一国二制度」の原則に基づいた統一に向け、台湾側に交渉の席に着くよう要求した。
国際的な批判が高まるなか、中国は国連が金門島侵攻を批判するのを阻止した。習氏と共産党の政権幹部らは、米国と同盟国が小さな島を巡って戦線を拡大するリスクを冒さないと計算しながら、経済制裁に耐えようと備えた。
習氏らの読みは当たり、日米は中国軍への攻撃を避けたが、危機は続いた。米国は陸・海・空の戦力をアジアへ増派した。台湾への武器援助を加速するとともに、中国に技術を輸出しないよう国際的な制裁を呼びかけ始めた。