アメリカはなぜオミクロン株の抑制に失敗したか
Why U.S. Failed to Control Delta and Omicron, Now Dominant Variant
新型コロナウイルスとの戦いで敗戦を繰り返すアメリカ Andrew Kelly‐REUTERS
<アメリカでオミクロン株の感染が激増し、あっというまに支配的になったのは、デルタ株のときと同様に米政府の対応の遅れとワクチン頼みの姿勢にある>
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」は、アメリカでもたちまち支配的になった。疾病対策センター(CDC)が、確認された新規の症例の73.2%を占めていることを明らかにした。
オミクロン株の台頭は実に速かった。アメリカで初めて感染者が確認されたのは12月1日で、11月22日に南アフリカから帰国した旅行者だった。
もっとも、アメリカに最初にオミクロン株が到達した正確な時期は明らかではない。CDCは11月15日の時点でそれと疑われる症状を報告していたが、その前からアメリカに存在していた可能性もある。
いずれにせよ、ここまでの入手可能なデータは、オミクロン株が非常に感染力の高い変異株であることを示している。
オミクロン株が主流になるまでの数カ月、アメリカの新規感染の圧倒的多数を占めていた変異株、デルタ株の場合も同じだった。どちらも到達した国ですぐに支配的になった。
コロンビア大学医療センターの疫学教授で、感染症疫学証明書プログラムのディレクターを務めているスティーブン・モースは、その理由を説明した。
「基本的には、全世界がデルタ株の封じ込めに失敗したということだと思う」と、彼は本誌に語った。「デルタ株は、予想外に感染力が強かったため、検査とウイルス対策の穴をすりぬけてしまった。優れた検査体制があっても、デルタ株やオミクロン株のように感染拡大が速いウイルスに追いつくのは難しいだろう」
対策はその場しのぎ
「パンデミック全体で起きていることだが、ウイルスの変種が特定されるころには、発生源とみられる地点をとっくに越えて広がっている」とモースは言う。
スタンフォード大学医学部の教授ジョシュア・サロモン教授(健康政策)は、アメリカはデルタ株への対応が遅すぎたし、対策も弱すぎたと考えている。
「政府のメッセージと政策は比較的弱く、混乱したものになった。デルタ株の急増に対しては準備段階でもっと周到に対応し、その後の対策もより積極的にする必要があったのだが」と、サロモンは言う。
サロモンによると、デルタ株とオミクロン株に対する対策の類似点のひとつは、ほとんどワクチン頼りだったということだ。
デルタ株への対応はワクチン接種にほぼ依存していたし、オミクロン株ではブースター接種にいちかばちかの賭けをしている。
「ブースターを含むワクチン接種だけでオミクロン株の大規模な感染拡大を封じ込めることができる可能性は非常に低いと私は思う。だがこれまでのところ、米政府はマスク着用や検査体制、行動制限などのかなりの部分を、州や地方自治体の保健当局などの裁量に任せてしまっている」