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なぜ母子家庭への生活保護だけが減っているのか?

2021年12月22日(水)14時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

母子世帯の生活保護が減っている(減らされている?)ことと関連して、提示しておくべきデータがある。18歳未満の子どもの貧困率が、2人親世帯と1人親世帯でどう違うかだ。貧困率とは、年収が全世帯の中央値の半分に満たない世帯をいう。<図2>は、横軸に1人親世帯の貧困率、縦軸の両世帯の差をとった座標上に43の国を配置したグラフだ。

DATA211222-CHART02.jpg

日本の子どもの貧困率は、2人親世帯は11.2%だが1人親世帯は48.3%と半分近くになる。その差は37ポイント。国際的に見て、1人親世帯に貧困が集中する度合いが高い国と言っていい。

日本のシングルペアレントはフルタイム就業がしにくい、賃金が安い(とくに女性)、養育費が払われない......。1人親世帯の貧困はこういう要因によるものと考えられているが、別の可能性も浮上してきた。母子世帯への公的扶助を意図的に削減しているなら、それこそ大問題だ。子どもの貧困が「つくられている」ことになる。

困っている人が増えているにもかかわらず、日本の生活保護の受給世帯数は横ばいで(定員制?)、母子世帯に限ると明らかな減少傾向にある(狙い撃ち?)。近年の生活保護の運用実態について、外部による厳格な検証が入るべきだ。

<資料:厚労省『被保護者調査』
    OECD「Family Database」

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