民主主義サミットで途切れた映像 オードリー・タンのプレゼン画像は台湾独立を示していた
バイデン米大統領が先週にオンライン形式で主催した「民主主義サミット」で、最終日10日、パネル討論会中に台湾の唐鳳(オードリー・タン)政務委員(IT担当)の説明スライド動画から画像が消され、音声だけになる一幕があった。写真は9日、同サミットの様子。ホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター/Leah Millis)
バイデン米大統領が先週にオンライン形式で主催した「民主主義サミット」で、最終日10日、パネル討論会中に台湾の唐鳳(オードリー・タン)政務委員(IT担当)の説明スライド動画から画像が消され、音声だけになる一幕があった。スライドが映した南アフリカの非政府組織(NGO)の国ごとの市民の権利の開放度を示す世界地図で、台湾と中国が違う色で塗られ、台湾を独自の存在と表示する形になっていたという。米政権側は、映像遮断を指示していないとしている。
事情に詳しい関係者はロイターに、タン氏の説明中に示された地図に米当局者らが地図に肝をつぶし、ホワイトハウスの要請で約1分後に映らなくなったと話した。
米国務省はスクリーンの共有で「混乱」があったため映像だけ消されとし、「単なる手違い」と述べた。同省報道官は「われわれはタン氏の参加を貴重なものと考えている。透明な統治や人権、虚偽情報との闘いなどについての台湾の世界一級の専門技術がタン氏の登場で明示された」と語った。
ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の報道官はロイターの報道内容が「正確でない」と指摘。電子メールで「ホワイトハウスがタン氏の動画遮断を一切指示していない」とし、画面共有を巡る混乱が原因だとし、同サミットのウェブサイトで全映像を視聴できると説明した。
タン氏は、地図のスライド資料が理由で米政府が動画を遮断したと思うかとのロイターの取材に対し、電子メールで「スライドの地図とは関係ないと信じている」と回答した。
「一つの中国」
米政権は台湾が中国政府から強い圧力にさらされているタイミングで、あえて台湾への支持を示すために招待した。
しかし米政権が主催する会議で台湾と中国が地図上で別に扱われていることは、「一つの中国」政策と呼んでいる現状の米国の政策と矛盾していると映りかねないと懸念した(関係者)という。
地図は台湾が民権で「開放的」を示す緑色だった一方、中国はアジア地域ではラオスやベトナムや北朝鮮と並んで、「閉鎖的」を示す赤だった。画像が消えた後、スクリーンには「このパネルの参加者の意見はあくまで個人の意見であり、必ずしも米政府の見解ではない」との表示が出た。
関係者の1人によると、地図が画面に出たとたん、米当局者の間では電子メールが飛び交い、NSC担当者は怒って国務省に連絡を入れ、台湾が個別の国であることを示しているように見えるとの懸念を伝えた。米政府は台湾当局に苦情を伝えたが、これに対し台湾側は、画像が消されたことに立腹したという。
消息筋は画像の消去について、地図そのものは国境を明示したものではなく、米国が過剰反応したと指摘した。
台湾外交部(外務省)は「技術的問題」と指摘。その後、タン氏のプレゼン資料は前もって米側に提供していると説明した。「台湾と米国はこの技術的問題について、完全な情報交換を行っており、双方は強固な相互信頼、強固で友好的な関係を有している」と述べた。
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