オミクロン株の急拡大が示した次世代ワクチンの必要性
世界保健機関(WHO)の主任科学者、ソーミャ・スワミネイサン氏も3日のロイターネクスト会議で、次世代ワクチンの必要性に言及。「研究開発を支援するため懸命に動いている」と説明した。
第1世代ワクチンの中で特に有効性が高いのは、スパイクタンパク質を標的としたメッセンジャーRNAワクチン(mRNA)と呼ばれるタイプ。当初の発症予防効果は95%と期待を大きく上回った。開発したファイザー/ビオンテックとモデルナが多額の収入を得て、株価が高騰したゆえんだ。
感染力を失わせた(不活化した)ウイルスを原料とする中国のシノバックと中国国家医薬集団(シノファーム)のワクチンは、抗体価が急速に減り、高齢者への効果は限られることを示す複数の研究がある。
一方、フランスのバイオテック企業・バルネバは10月、不活化タイプの同社製ワクチンの効果が、やはりスパイクタンパク質を標的にするアストラゼネカ製ワクチンを上回ったと発表した。
ただ、より最近の英国における研究では、ファイザー/ビオンテックのワクチンを2回接種した後、追加接種の効果を7種類のワクチンで試したところ、バルネバだけ抗体価が増えなかったという。
オミクロン株の脅威に対しては、ほとんどの企業が既存ワクチンの新バージョン開発を進めている。アストラゼネカは、オミクロン株と共通の変異特性を持つベータ株に特化したワクチンの初期臨床データを近く入手すると明らかにした。
遠い道のり
複数の研究グループや企業は、ウイルスが生き残る上で変異できないほど重要な部分を標的にするといった、より幅広い防御能力を備えたワクチンの開発にも着手し始めた。それでも専門家は、成功させるにはもっと資金を振り向けるべきで、期間も1年以上はかかる公算が大きいとくぎを刺す。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン設計に携わったハーバード大学のワクチン研究者、ダン・バルーチ博士は「価値ある努力なのは間違いない。それはオミクロン株というよりも、その次の変異株への答えになる」と指摘した。
モデルナは、どうすれば新型コロナウイルスの変異しにくい部分に的を絞れるか、研究を進めているところだ。スティーブン・ホーグ社長は、そうしたワクチン開発には完了まで何カ月も要する大規模臨床試験が不可欠になると話す。
同社が研究しているのはオミクロン株に特化したワクチンで、最大4種類の変異株に対応できるワクチンも検討中。ホーグ氏は「現実的に考えれば、これらの第2世代ワクチン開発が、半年から1年で実を結ぶとは思えない」と述べた。
CEPIは、イスラエルのミガル研究所傘下企業で経口式ワクチンを開発しているミグバックスに430万ドル、サスカチュワン大学のワクチン・感染症研究機関に最大500万ドルを提供。いずれも変異株に効果があるワクチン開発の初期段階にある。
より効果があるとされる自己増殖型mRNAワクチンを手掛けるグリットストーン・バイオも、CEPIから最大2600万ドルを供与され、ゲーツ財団と米政府の支援も受ける。
アンドリュー・アレンCEOは「パンデミック発生から間もない時期に製造されたワクチンが、われわれに製造可能な最善のワクチンだと考えるのはやや甘いというべきだ」と語った。
(Julie Steenhuysen記者)

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