オミクロン株の急拡大が示した次世代ワクチンの必要性

新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株の出現は、ウイルスの急激な変異に影響を受けにくいワクチン開発が、是非とも必要だという警鐘だ――。写真は3月、フィラデルフィアでワクチン接種を受ける女性(2021年 ロイター/Hannah Beier)
新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株の出現は、ウイルスの急激な変異に影響を受けにくいワクチン開発が、是非とも必要だという警鐘だ――。ロイターが取材した有力なウイルス学者や免疫学者は、こう話した。
いわゆる第1世代ワクチンの大半は、新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する際に使う表面の突起(スパイクタンパク質)を標的にしている。科学者の間でオミクロン株への警戒感が強まったのは、このスパイクタンパク質での30カ所余りを含め、同株の変異個数がそれまでの変異株よりずっと多いからだ。
オミクロン株が既存ワクチンや以前の感染で獲得した免疫機能をどの程度すり抜ける力があるのか、という研究は現在進行中。新たなデータによると、ファイザー/ビオンテック製ワクチンは2回接種した段階でも、オミクロン株に対する防御がある程度弱まることが分かっている。
もっとも、今のワクチンが当面効果を維持するとしても、オミクロン株という劇的な変異によって、ウイルスの簡単に変異しない部分に作用するワクチンが求められている状況が浮き彫りになった。
米シアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究センターのウイルス学者ラリー・コリー博士は「オミクロン株から1つ明らかになった点は、新型コロナウイルスは消えてなくならないということだ。より効果の高いワクチンが必要だ」と述べた。同氏は、米政府が支援するワクチンの臨床試験を監督している。
現段階でもワクチンは、重症化や死亡を防ぐ力はほぼ保っている。世界連携でワクチン開発を促進するために発足した官民パートナーシップの感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)のリチャード・ハチェット最高経営責任者(CEO)は、緊急対応手段として今あるワクチンの存在は「際立っている」と評価する。
しかし、より長期的なリスクを制御するには、もっと多くの取り組みと資金が不可欠だ。今年3月にはCEPIが、新型コロナウイルスの変異株や中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)といった類似のウイルスに効くワクチン開発に向けて、2億ドルの拠出を呼び掛けた。ハチェット氏は「われわれは、予想不可能な将来に対するヘッジとして、投資をしなければならない」と強調した。