北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す
そこへさらに林芳正氏を外相に充てたということは、もう親中まっしぐらで行くことを示唆している。
私は林氏と何度かテレビ対談をしているが、林氏は人格的には威張ってなく、フランクな感じで好感が持てる。ところが対談を始めてみると、驚くほどの親中ぶりを発揮し、私はナマ放送で思わず「あり得ない!」と言ってしまったという経験がある(2018年10月)。
それもそのはず、林氏はそのとき日中友好議員連盟(日中議連)の会長だった。
2019年5月5日には日中議連の代表として訪中し、北京でチャイナ・セブンの一人である汪洋(全国政治協商会議主席)と会見している。
汪洋はこの時、日中議連の長年にわたる中国への貢献を讃え、特に「去年は習近平主席と安倍首相が何度も会い、一帯一路プラットフォームを通して協力と友好を深めている」と礼賛した。
さすがにこのまま外相を務めるのはまずいと思ったのだろう、今年11月11日に外相就任と同時に林氏は日中議連の会長職は辞任したものの、際立った親中派であることに変わりはないだろう。
今年11月18日には中国の王毅外相と電話会談しているが、林氏の方から「来年は日中国交正常化50周年記念なので、日中友好を一層深めたい」と申し出、日本の報道によれば「王毅外相も賛同した」とある。林氏の方が日中友好に積極的なのだ。
また中国側報道では、王毅が林氏に訪中を要請したとは書いてないが、林氏自らが、11月21日に「王毅外相から要請があった」と明らかにしてしまった。
中国はクワッドを骨抜きにする狙い
中国は東京五輪を支援し参加してきたのだから、日本が北京冬季五輪をボイコットするなどということはできないと思っている。
事実11月25日の外交部定例記者会見で趙立堅報道官は以下のように述べている。
──中国と日本は、互いの五輪開催を支援するという重要なコンセンサスがある。 中国は、東京五輪の開催にあたり、既に日本側を全面的に支持してきた。日本側には基本的な信義があるべきだ。(引用ここまで)
「重要なコンセンサス」が出来上がっていたということは即ち、日本は「こっそり」=「水面下で」、「すでに中国と固く約束を交わしていた」ものと解釈することができる。それを気性の荒い趙立堅がばらしてしまったことになろうか。
したがって岸田首相や林外相がどんなに言葉を濁しても、日本が外交的ボイコットをする可能性はないと言っていいだろう。閣僚のレベルを下げるくらいのことはしても、「政府高官」を誰一人派遣しないということはないということだ。