最新記事

日本政治

なぜ君たちは与党になれないのか

Awakening from a Nightmare

2021年12月9日(木)21時04分
北島純(社会情報大学院大学特任教授)
立憲民主党

枝野前代表(左)と泉新代表(写真は2020年9月10日) David Mareuil/Pool via REUTERS

<新代表に泉健太を選んだ立憲民主党が、政権交代可能な政党になるために決定的に欠けているもの>

先週、立憲民主党の新代表に選ばれた47歳の泉健太氏は自らを「新しい船長」になぞらえた。だが総選挙敗北を受けた船出は順風満帆ではない。

立民は共産党と共闘した10月の総選挙で比例を23議席も減らし、国民に鉄ついを下された。枝野幸男前代表は右にウイングを広げて中道リベラルの王道を目指すとしていたが、国民に見えていたベクトルの向きは逆で、むしろ左傾化が深まっていた。その迷走を横目に、保守とリベラルの間の広大な空白地帯を埋めたのが日本維新の会だった。

なぜ立民は政権を取れないのか。世論調査での政党支持率は一桁台が続き、自民党の4分の1から5分の1にとどまる。低支持率は、政権を託すに足るだけの「信頼」がないことを物語っている。「信用」がないわけではない。だが打ち出す施策は一向に国民に浸透せず、政党としてのアイデンティティーを確立できているとは言い難い。

与党の失策や不祥事批判は短期的に世間受けしても一過性にとどまり、むしろSNS上では立民の提起した批判が立民自身に返ってくる「ブーメラン」と揶揄されている。

不信の原因の1つは、立民の源流である民主党が政権を担った3年3カ月に対する忌避感が残像のように国民の意識に沈殿していることがあろう。2017年総選挙の際、希望の党合流をめぐる混乱の中で枝野氏が一人で創設した政党が立民である。その時点で悪しき残像は一旦リセットされたはずだった。

しかし組織論としてはそうでも、プレーヤーは変わらない。分裂した国民民主党議員との昨年の再合流は、野党としての大きな塊を再形成する意義はあったにせよ、民主党が復活したかのような印象も呼び起こした。民主党のスティグマ(烙印)を払拭できない立民は、常に国民の批判的な視線にさらされている。

「地力」も「知力」もない

民主党が政権転落後の13年に作成した「改革創生の第一次提言」で指摘された課題には、積み残されたものも多い。「現状は怠惰ゆえの自業自得」とみる向きもあろう。しかし問題の本質は、主権者が統治を委ねるに値する「政治的な強靭性」を立民に見いだし難いことにあるのではないか。

政治的強靭性は、具体的な政策立案能力から地方自治に根付いた政党組織の全国展開に至るまで、「地力」とも称される政党の基礎的体力に支えられる。野党としては、霞が関の官僚機構に依存しないで政策を立案し、与党の一歩先を行く代替案を提示できる知力が肝になるが、今の立民には欠けている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中