なぜ君たちは与党になれないのか
Awakening from a Nightmare
日本の場合、政策立案の源泉たる霞が関の官僚機構を利用できるのは与党だけ。野党が与党に対抗して全ての分野で独自案を立てることは期待すべくもない。しかし、少なくとも国民の関心が高い課題について、例えば「立民ならDX政策はこうする」という明確な政策プランを用意する必要がある。それがトリガーになって国民の間に「立民に任せてみよう」というストーリーが生まれるからだ。
くしくも自民党政権は集団的自衛権行使の解釈変更や日本学術会議の任命問題で、少なからぬ学者や有識者の支持を失った。そうした学的共同体の協力が得られれば政策立案力は向上するだろう。
他方で日本における市民社会の脆弱性という課題もある。政府、企業と等位な市民社会の構築は、ジェンダー平等など市民的リベラルに立脚する立民にとっては戦略的に重要だ。民主党は「新しい公共」という概念を提案して市民社会の構築に取り組んだが道半ばに終わった。この問題にどう対処していくのか。
日本社会全体にとっての政治的脆弱性という視点も重要だ。敗戦後の混乱の中で日本は10年をかけて、保守合同を核とする政界再編を成し遂げ、融通無碍の自民党と社会党からなる55年体制をつくり上げた。それは米ソ冷戦の中で、生き残りを懸けた日本型のレジリエンス(強靭性)でもあった。
「政治的強靱化」への道
グローバル化が進む現代では、気候危機や経済格差の深刻化など持続可能性を損なう「資本主義の危機」と、米中新冷戦下で専制主義の挑戦を受ける「デモクラシーの危機」が叫ばれる。このなかで、各国政府は新型コロナウイルス対策、脱炭素に伴うエネルギー戦略の転換など高度に複雑化した政治課題に直面している。
分断の進む社会での舵取りは誰であっても容易ではない。だからこそ主権者が状況の変化に応じて政権を選択できることが、社会として、国家としての強靭性を担保する。
しかし日本では安倍政権が12年以降につくり上げた「一強多弱」のアンバランスな政治状況が続き、国民に政権選択の自由が確保されているとは言い難い。選挙での低投票率も続いている。それゆえ立民が注力すべきは「急がば回れ」で、主権者が政権選択の自由を行使できる土壌を醸成することにほかならない。
政治的強靭性の構築という戦略目標の下、立民が支持を拡大できるかどうかは今後の個別的な取り組みによる。