最新記事

中国

安倍元首相オンライン演説を台湾はなぜ歓迎しないのか?

2021年12月6日(月)12時39分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
安倍晋三

安倍晋三元首相 Kim Kyung-Hoon/Pool-REUTERS

12月1日、安倍元首相は台湾で開かれたフォーラムにオンラインで参加し講演した。しかし台湾ではあまり報道されず、むしろ批判が目立つ。台湾が「中華民国(台湾)の領土」と位置付けている尖閣を「日本の領土」と主張したからだ。

安倍元首相の講演を報道しないようにする台湾

12月1日午前、台湾の民間シンクタンク「國策研究院」で安倍元首相(以下、安倍氏)は「新時代の日台関係」というタイトルで基調講演を行った。

日本では安倍氏が「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と言ったとして非常に大きく取り上げられ、手柄として礼賛されている。

ところが肝心の台湾では報道しないようにしているだけでなく、むしろ批判が目立つ。

まず、報道しないようにしている証拠として、台湾政府「中華民国」外交部のウェブサイトをご紹介しよう。ここに書いてあるその日のその日の主たる出来事は毎日アップデートされるので、日にちが経つと前のページを捲(めく)らなければならなくなる。その面倒を省くため、「12月1日」前後の外交部ウェブサイト画面をキャプチャーして以下に示す。

endo20211206114401.jpg
「中華民国」外交部ウェブサイトより

12月1日には3つの行事が書いてある。下から順に書くと

●外交部は、オランダ下院が1日で2つの友好動議を可決したことを歓迎し感謝する。

●中華民国政府は、友好国であるホンジュラス共和国の大統領選挙の成功に祝意を表する。

●呉釗燮外交部長、「豪州人報」の取材を受け、オーストラリアの地域平和への関心と台湾への支援に感謝を表明した。(以上3項目引用)

こうした他国で起きたことや取材を受けた程度のことを重要項目として書いているのに、安倍氏の講演に関しては一言も触れてない。

11月25日や26日には、アメリカ議会下院のMark Takano(高野)氏という一議員の訪台に関してまで二日にわたって書いているが、日本の総理大臣だった安倍氏に関する記述はまったくないのだ。念のために12月2日の出来事もチェックしてみたが、安倍氏の名前はやはり見当たらない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中