最新記事

中国

安倍元首相オンライン演説を台湾はなぜ歓迎しないのか?

2021年12月6日(月)12時39分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

台湾政府側の表明としては唯一、台湾外交部の報道官が記者会見で、「台湾は国際的な政界の要人が台湾の平和安定の重要性に関心を持ってくれたことを感謝する」と述べたのみで、しかも「各国の要人が民間の学術フォーラムで発表した個人的見解に関して外交部はコメントをしない」とまで付け加えている。もちろん「安倍晋三」という名前はここでも出していない。

台湾はなぜ安倍氏を軽視したのか?

なぜ安倍氏が、このような扱いを受けるのかに関して、本来なら日本は強い関心を示さなければならないが、この実態を報道する日本メディアは(筆者がこの時点で知る限りでは)一つもないように思われる。日本では一斉に口をそろえて安倍氏が演説で「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と言ったことや習近平を名指しで批判したこと、あるいは中国大陸の外交部が激しく抗議したことなどだけを報道している。

ところが現実はまったく異なる。

たとえば、台湾野党の国民党は安倍氏の講演に関して「許せない」と抗議しているのである。

なぜ許せないのか?

それは安倍氏が尖閣諸島などを「日本の領土」と言ったからだ。

台湾では尖閣諸島などを「釣魚台列嶼」と称しているが、これを「中華民国の領土」と宣言していることは、国民党だろうと民進党だろうと変わらない。台湾は「中華民国」として尖閣諸島などを「中華民国の領土」と強く主張している。

したがって国民党は安倍氏の講演が終わるとすぐに台湾外交部に「領土主権への侵犯は絶対に認めることができない」と強い抗議を表明したのである。

政権与党の民進党政権としても同じこと。

安倍氏の講演を肯定などしたら、台湾全市民の抗議を受けて政権交代するところにまで追い込まれる可能性がある。だから「安倍晋三」の名前を全て消し、彼の講演に関しても「なかったこと」にするしかないのである。

安倍氏の講演の実際の言葉

では安倍氏は実際には何と語ったのか、「國策研究院」が「IMPACT Forum日本國元內閣總理大臣安倍晉三閣下」と題して公開したユーチューブを見てみよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

電気・ガス料金、中東情勢で直ちに上昇することない=

ワールド

中国でパナマ籍船拿捕が急増、状況を注視=米連邦海事

ビジネス

ナフサ不足で医療機器が出荷困難の可能性、透析・手術

ビジネス

トヨタ、中国で56万台リコール 後部座席の不具合で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    実は「ミュージカルはポリティカル」?...社会の闇を…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中