最新記事
生体ロボット世界初、自己複製する生体ロボット、カエルの幹細胞から開発される
自己複製する生体ロボット「ゼノボット3」 Douglas Blackiston
<2020年、プログラム制御可能な生体ロボット「ゼノボット」を世界で初めて開発し、大いに注目を集めたが、この研究を進化させて、自己複製する生体ロボットが開発された>
米バーモント大学、タフツ大学らの研究チームは2020年1月、プログラム制御可能な生体ロボット「ゼノボット」を世界で初めて開発し、大いに注目を集めた。ゼノボットは、人工知能(AI)による設計のもと、アフリカツメガエルの胚から採取した多能性幹細胞から培養されたもので、目標に向かって移動したり、物を運搬したり、集団行動できる。また、自己再生でき、切られても自然に修復する。
Meet the Xenobot, the World's First-Ever "Living" Robot
生殖する「ゼノボット3.0」の開発に成功
2021年3月にはこれを進化させた「ゼノボット2.0」を開発。アフリカツメガエルの胚から採取した幹細胞を自己組織化させてスフェロイド(細胞凝集塊)に成長させたところ、数日後に一部の細胞が分化して繊毛を作り出し、より速く移動できるようになった。また、「ゼノボット2.0」では情報を記録する読み書き機能も実装されている。
ゼノボット2.0
研究チームはさらに研究を重ね、生殖する「ゼノボット3.0」の開発に成功した。一連の研究成果は、2021年11月29日、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表されている。
「ゼノボット3.0」の生殖は「自発的な運動学的自己複製」と呼ばれる現象によるものだ。アフリカツメガエルの胚から多能性幹細胞を採取して解離させ、生理食塩水に置くと、自然とくっついて約3000個の細胞にまとまり、5日後には繊毛上皮で覆われたスフェロイド状の表皮となる。
これをペトリ皿で約6万個の幹細胞の中に入れると集団行動によって一部の細胞が積み重なっていき、50個以上の細胞になると、その子となって自ら動きはじめる。さらに解離した幹細胞があれば、同様のプロセスで子から孫ができる。
効率よく自己複製させる形状をAIでつきとめる
研究チームは、人工知能を活用し、効率よく自己複製させるためには、パックマンのようなC型の形状が最適であることも突き止めた。C型となるように切り込みを入れたゼノボットが幹細胞の中を動き回ると、解離した幹細胞がパックマンの口の部分に次々と集まって積み重なり、数日後には、子となって自ら動き出す。
Xenobots: Building the First-Ever Self-Replicating Living Robots
「自発的な運動学的自己複製」は、これまで分子レベルではみられたが、細胞全体や生命体レベルで観察されたことはない。研究論文の責任著者でバーモント大学のジョシュ・ボンガード教授は「生命体の中でいままで知られていなかった領域を発見した。これは広大な領域だ」と述べている。