最新記事

変異株

「デルタ株の脅威など児戯に等しい」変異株オミクロン...いま分かっていること

2021年11月30日(火)19時18分
ダニエル・ポリティ
ヒースロー空港

英政府は南アからの渡航制限に踏み切った(ロンドンのヒースロー空港) TOBY MELVILLEーREUTERS

<世界がこれほど恐れなければならない理由は何か。現時点で分かっていること、懸念されていることをまとめた>

南アフリカで最初に確認された新型コロナウイルスの新たな変異株に、世界中の保健当局が警戒を強めている。

この最新の変異株に比べれば、デルタ株の脅威など児戯に等しいと言う科学者もいる。既に多くの国が渡航制限などの措置を講じている。

世界保健機関(WHO)は11月26日、これを「懸念される変異株」に指定し、ギリシャ文字のアルファベットから「オミクロン」と命名した。

オミクロン株は極めて感染性が高く、既存のワクチンが効かない可能性があるとの情報を受け、世界中の証券市場で株価が急落した。

この変異株について、分かっていることをまとめてみた。

――なぜこれほど懸念されている?

変異の数が多いからだ。オミクロン株はウイルスが人間の細胞に取り付くときに使うスパイクタンパク質の遺伝子が30カ所以上も変異している。デルタ株の2倍に当たり、最初に中国で出現したウイルスとは似ても似つかないものになっている。「これまでに目にした最も甚だしい変異だ」と、英ワーウィック大学のウイルス学者、ローレンス・ヤングは言う。

しかも、その変異は「これまでに目にした最も懸念すべきもの」だと、英健康安全保障庁の主任顧問のスーザン・ホプキンズは警告する。変異数が多いため懸念材料も多く、「感染性や伝播性を高める変異、ワクチンによる免疫や自然免疫を擦り抜ける変異」を持つ可能性があるからだ。

――デルタ株より感染力が強い?

遺伝子の変異から非常に感染性が高いとみられているが、まだ確証はない。危惧すべき兆候はあるが、デルタ株より感染力が強く、重症化率も高いかどうかははっきりしない。

それでも油断は禁物だ。南アではここ数週間に感染者が急増。その圧倒的多数は、最大都市ヨハネスブルクを含むハウテン州に集中している。オミクロン株による流行とは断定できないが、専門家はその可能性が高いとみている。

他の変異株と同様、オミクロン株も感染しても症状が出ないケースがある。

――ワクチンは効かない?

これについても、まだ明確な答えはない。専門家によれば、ワクチンが全く効かないことは考えにくく、過度に恐れるのはまだ早い。

これまでの変異株に対してワクチンはおおむね有効だった。ただし、オミクロン株ほど変異の多い株は出現していなかったことも事実だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中