最新記事

米中対立

米中首脳会談、ウイグルやチベット問題も協議 習近平は台湾めぐりバイデンけん制

2021年11月16日(火)18時32分
中国でテレビ中継された米中首脳のオンライン会談

写真は中国でテレビ中継された米中首脳のオンライン会談。北京市内のレストランで撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は15日(日本時間16日)、オンライン形式で会談した。3時間を超える会談で、バイデン大統領は人権への配慮を要請。習主席は、台湾を巡り挑発には対応すると警告した。

注目の世界二大強国の首脳会談では、チベットや香港、新疆ウイグル自治区での中国の行動など、両国が対立する分野について協議。具体的な成果はなかったものの、冷え込んだ関係の修復する機会となり、双方とも会談は率直で実りあるものだったと評価した。

中国国営新華社によると、習主席は両国を「海を航行する2隻の巨大船」になぞらえ、衝突しないよう、安定した航行を続ける必要があると指摘。

「大統領が、政治指導力を発揮し、米国の対中政策を合理的、現実的路線に戻すことを期待する」と述べたという。

バイデン大統領も、両国が世界に対し衝突を回避する責任を負っているとの認識を示した。

会談の冒頭で、バイデン氏は人権と安全保障について率直に話し合うことを望んでいると表明。「米中の指導者として、両国間の競争が意図的かどうかにかかわらず、衝突に発展しないよう図る責任が私たちにはある」とし、「純粋な」競争であるべきだと述べた。

習主席は「世界の2大経済国そして国連安全保障理事会の常任理事国として、中米は意思疎通と協力を強化する必要がある」と話した。

通商・経済問題

トランプ前政権下の米国と中国は、通商問題で激しく対立した末、第1弾の通商協定を締結した。協定では、中国が米国製品・サービスの購入を2000億ドル増やすことになっているが、それは実現していない。

中国当局者によると、習主席はバイデン氏に、通商問題を政治問題にしないことは重要と伝えた。

米当局者によると、両首脳は世界のエネルギー供給に対処する措置も話し合った。来年2月の北京五輪への米政府要人派遣問題は、話題に上らなかったという。

台湾問題

台湾問題では、両国の溝は依然深い。ただ、会談では双方が立場を説明した。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は、台湾に関する『一つの中国』政策に米国が引き続きコミットしていると表明。同時に「台湾海峡の平和と安定を脅かしたり、現状を一方的に変更しようとする措置には強く反対」すると述べた。

習主席は「台湾独立」勢力が一線を越えた場合、中国は「断固たる措置」を取らなければならないと述べた。

新華社によると、台湾の独立派や米国でそれを支持する勢力は「火遊びをしている」と習主席は指摘。「中国は忍耐強く、大いなる誠意と努力をもって平和的な統一を目指しているが、台湾の分離派が挑発し、一線を越えてしまえば、断固たる措置を取らなければならなくなる」と述べたという。

台湾外交部(外務省)は首脳会談について、中国が台湾海峡の平和維持へ「共同責任」を負い、対話を通じて相違を解消できることを期待すると表明した。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は、新疆、チベット、香港における中国の慣行のほか、より広範な人権について懸念を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、インフラ被災で遅れる支援 死者1万

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中