中国の魔の手から「欧州の中心」を救え
U.S., EU Risk Losing 'Heart of Europe' to China, Montenegro Warns
西バルカンは、ビジネスの世界的な拡大と覇権を狙う中国の政策の鍵を握る地域となっている。05〜19年、中国の政府および政府系企業によるボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビアへの投資額は146億ドルを超えた。
もっともこの地域への投資額が最も多いのは今もEUで、その割合は全体の70%。中国の1%をはるかに上回る。一方で中国は、西バルカン諸国の成長に欠かせない大型プロジェクトに集中的に投資してきた。
中国の広域経済圏構想「一帯一路」はこの地域にも及んでおり、中東欧とギリシャのピレウス港(中国の国営海運会社である中国遠洋公司が大半を保有する)を結ぶ鉄道や道路が建設されている。
中国の政府系企業はモンテネグロでは高速道路、セルビアでは鉄道、ボスニア・ヘルツェゴビナでは石炭プラント、北マケドニアでは道路に資金を提供した。
借金は積み上がってきている。中国からの債務残高はGDP比でボスニア・ヘルツェゴビナでは3%、セルビアでは7%、北マケドニアでは8%、そしてモンテネグロでは21%に達している。
世界各地の小国が、中国のいわゆる「債務のわな外交」に飲み込まれている。これは中国から多額の借金をして返済できなくなった国が、インフラの管理権の譲渡や、中国の地政学的利益に対する後押しを余儀なくされる状態を指す。
インフラ整備も観光業も「東側」諸国が頼り
モンテネグロはEU当局や欧州の金融機関と協力し、中国からの債務10億ドル分の借り換えを目指している。これは前政権がセルビアとモンテネグロをつなぐ新しい道路の建設費の一部として借りたものだ。
「国内のインフラの改善がどうしても必要だった」とラドゥロビッチは言う。「中国は融資を申し出、当時の政府はそれを受け入れた。この中国からの債務の返済は可能だ」とラドゥロビッチは述べた。
モンテネグロは先ごろ、1回目の分割返済を行った。借り換えにより、債権は欧州やアメリカの金融機関の手に渡るかも知れない。そうなればモンテネグロ政府が中国の債務のわなに落ちたのではという懸念も緩和される。
「わが国は政治的には西側だが、経済は東側に依存している」とラドゥロビッチは述べた。「中国からはこうした借金があり、観光業は旧ソ連諸国からの観光客頼みだ。この矛盾した状況に橋渡しをし、さらなる投資を西側から呼び寄せたい」
ラドゥロビッチに言わせれば、西側の理想に殉じようというモンテネグロ政府の意志は固い。「価値観や理想と、投資のどちらがより大切なのかとわれわれは自問しなければならない。確かに投資は必要だが、それによってわが国の政策の優先順位が揺らぐことはない」