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習近平「歴史決議」──鄧小平を否定矮小化した「からくり」

2021年11月14日(日)20時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

毛沢東に関しては中国共産党建党から建国前までの業績があるので、当然誰よりも多くなるが、「鄧小平、江沢民、胡錦涛」を平等に扱ったままだと、鄧小平を特に希薄化したことにならない。

そこで「江沢民+胡錦涛」をさらに、もう一度讃えれば、相対的に「鄧小平の部分」だけを「最小化」することができるわけだ。

面白くなってしまって、文字数を数えてみた。すると以下のような結果が出てきた。

 毛沢東建国前:493

 毛沢東建国後:460

 毛沢東全体:953

 鄧小平:385

 江沢民:285、2回目の201を加えると全体で285+201=486

 胡錦濤:218、2回目の201を加えると全体で218+201=419

 習近平:124+514+216=854(3段階に分けて言及)

 (但し2回目の文字数は「江沢民+胡錦涛」402文字を2分した。)

このように、結果として「鄧小平に関して論じた部分が最小になる」という、なんとも凄まじい「精緻な」計算をしていることに気づいたのだ。

笑わずにはいられないではないか。

それも「江沢民+胡錦涛」の部分は、この二人だけ2回繰り返して言ったことが目立たないように、二人を混然一体となる形で、つまり単独に繰り返したと分からないように工夫して論じている。

知能犯というか、「涙ぐましい」とさえ思ってしまった。

既に中国でも定着してしまっている鄧小平への評価を、真正面からは否定できないが、しかし実際上は否定するという工夫までしているところが興味深くてならない。

もっとも、鄧小平を神格化することに最も貢献したのは日本である。

そのことは拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の「まえがき」および「第七章の四」で詳述した。

日本政府は、鄧小平神話を形成することによって中国の経済発展に貢献した自民党政権の責任を直視し、自公連立政権で、さらにそれを助長しようとしていることを認識すべきだろう。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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