最新記事

チベット

「中国共産党の指導者は文化の違い理解せず」 ダライ・ラマが会見、若い世代に期待も

2021年11月10日(水)17時26分
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は10日、日本で活動する外国メディアとオンライン形式で会見し、創立100年を迎えた中国共産党によるチベットや新疆ウイグル自治区への対応について、「文化の違いを理解していない」などと批判した。写真はスウェーデンで会見した際のダライ・ラマ14世。2018年12月、マルメで撮影(2021年 TT News Agency/Johan Nilsson via REUTERS)

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は10日、日本で活動する外国メディアとオンライン形式で会見し、創立100年を迎えた中国共産党によるチベットや新疆ウイグル自治区への対応について、「文化の違いを理解していない」などと批判した。

ダライ・ラマ14世は、中国には漢民族だけでなくチベットなどの異なる民族グループがいるとした上で、「われわれは独自のユニークな文化を持っている。中国共産党の偏見を持った指導者たちは文化の違いを理解していない」と語った。多様性を反映した政策を実行すべきとしつつ、「現実は、漢民族による締め付けが強すぎる」と述べた。

その一方で、最近の中国には変化が見られるとも指摘し、「新しい世代の中国のリーダーシップの下で、(中国は)変化していくと思う」と語った。

緊張が増す中国と台湾の関係については、平和のために祈ると述べた。「台湾には漢民族、中国の文化、伝統、言語がある。台湾は中国の長い伝統文化を受け継いでいる。経済的には、台湾は中国から多くの支援を受けられるだろう。文化的には、仏教を含め、中国の兄弟姉妹たちは台湾から多くを学ぶことができる」と話した。

創立100年の節目を迎えた中国共産党は8日、第19期中央委員会第6回総会(6中総会)を開いた。異例の3期目を目指すとみられる習近平国家主席について記者から質問されたが、ダライ・ラマ14世はノーコメントだと答えた。

習主席に会う計画はないものの、「私も年を取った」として古い友人に再会するため中国を訪れたいと語った。しかし、台湾については中国との関係が「非常にデリケート」だとして訪問しない考えを示した。

このほか、アフガニスタンなどでイスラム主義組織と欧米諸国との対立が続いていることに関連し、「人間は人間として生まれるのであって、この宗教、あの宗教を信じる者として生まれるわけではない」と語った。「全ての宗教は愛というメッセージを持っている。問題は政治家や一部のエコノミストが宗教の違いを利用することにある」と述べた。

ダライ・ラマ14世は1959年、中国政府の弾圧を逃れてインドに亡命。インド北部に亡命政府を樹立した。会見はインドからオンラインで行った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中