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岸田政権

外相時代は申し分のない結果を出した岸田氏だが、首相としては心配事がある

WHAT WILL FUMIO KISHIDA DO?

2021年11月9日(火)20時02分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

2つ目の懸念は、初の所信表明演説にあった。演説の中で岸田氏は、あることわざを引用した。「早く行きたければ、1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」。個人主義より同調をよしとする教育の下で育った多くの日本人にとっては、説得力のある言葉だっただろう。

しかし、今の日本に欠けているのはさらなる個人主義だ。人は時に「1人で進む」ことも必要であり、コロナのような非常時には「早く進む」ことが必要である。それが先駆者になるということなのだ。岸田氏は「日本人の底力を信じる」とも宣言したが、底力を引き出すためには個人の自主性を尊重しなければならない。

外相時代と同じく首相としても前進するために、岸田氏は今後、コロナ禍のような緊急時に予算の均衡を実現せよ、という無意味な主張にもみられる官僚の抵抗に打ち勝つ覚悟がなくてはならない。

そして最も重要なのは、自らの政策目標と、それを達成するための具体的な戦略を明確に示すことだ。それがなければ、政権を長く握ることはできないだろう。

KOICHI_HAMADA_profile.jpg[著者]浜田宏一 KOICHI HAMADA

経済学博士、米エール大学名誉教授。内閣府経済社会総合研究所長などを経て、安倍内閣で情報提供や助言を行う内閣官房参与を務めた。近著に『21世紀の経済政策』(講談社刊)。


©Project Syndicate

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